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消費のGDP構成比55.1%(2019年)、5年で3.3ポイント低下

新型コロナウイルスは予想以上に経済に悪影響を及ぼしている。世界の工場である中国の生産の停滞は自動車を始めとする部品供給の流れを止め、世界的に生産を麻痺させつつある。日本を取り上げてみても、工場の一部は生産をストップせざるを得なくなり、観光客も大幅に減少、国内でも移動を控えるといった事態が起こっている。明らかに経済活動は鈍ってきており、昨年10-12月期のGDPのマイナスに続き、今年1-3月期も前期比減となり、日本経済は景気後退下にあると言ってよいだろう。

2月のPMIが公表されたが、日本の総合指数は47.0と前期比3.1ポイントも下落し、2014年4月以来約6年ぶりの悪化だ。製造業は47.6、前月比1.2ポイント減だが、サービス業は46.7と4.3ポイントも低下し、製造業を下回った。特に、新型コロナウイルスにより観光業が打撃を受けていることがサービス業の急低下を招いたようである。

米国のPMIサービス業も2月、49.4に下落したことから、総合指数は49.6と2013年10月以来の50割れとなった。その結果、先週末、米10年債利回りは1.47%と政策金利を下回り、過去最低に接近しつつある。

ドイツのPMI総合は2月、51.1と前月比0.1ポイント減にとどまり、日本や米国のような50割れといった事態にはいたっていない。製造業指数は47.0と生産活動の低下を示しているが、サービス業は53.8と底堅いからだ。だが、2月のZEW景況指数は1月の26.7から8.7へと急低下しており、物流の遅延や部材不足といった問題がドイツ経済にも及んでいるのかもしれない。

日本のPMIサービス業が大幅に低下したのは宿泊、飲食、旅客運送などのサービス業に占める割合が大きいからである。第3次産業活動指数によると、それらの割合は約8%であり、GDPでは約6%を占める。日本百貨店協会によれば、2月1日から17日までの売上高は前年同期比15%も減少したという。特に、訪日外国人の免税品売上高が前年比で約7割も減少しており、2月後半にかけてはさらに落ち込みは大きくなるのではないだろうか。こうした百貨店などの小売業などを加えれば、訪日外国人減による日本経済への影響はさらに大きくなるはずだ。

昨年10-12月期の日本の実質GDPは前期比1.6%減少した。ひとえに、大幅マイナスは消費税率引き上げによる反動減があらわれたことに起因する。減少率は前回の引き上げ後の2014年4-6月期(-1.9%)以来である。民間最終消費支出が前期比2.9%減少し、これだけでGDPを1.6%引き下げた。昨年7-9月期の民間最終消費支出は前期比0.5%と駆け込み需要は弱かったにもかかわらず、10-12月期の減少幅は大きくなった。このことは民間企業設備にも当てはまる。前回引き上げ後は-1.9%だったが、今回は-3.7%も落ち込んだ。

前回引き上げ後の4-6月期、民需は前期比3.2%減少したが、7-9月期、10-12月期と3四半期連続のマイナスとなった。それだけ3%の引き上げは民間部門の需要を減退させたのである。同じことが起きるとは限らないが、世界経済が減速しており、そこへ新型コロナウイルスという人の移動を妨げる障害の出現となれば、1-3月期のGDPが改善することはない。民間最終消費支出の低迷や企業の設備投資意欲の低下等GDPの主要な分野は軒並み振るわないだろう。外需に至ってはなおさら期待できない。

1月の貿易統計によれば、輸出は前年比2.6%、輸入は3.6%それぞれ減少した。輸出は2018年12月、輸入は2019年5月以降前年割れが続いており、外需は不振である。輸出と輸入はすべての地域に対してマイナスであり、2月の貿易はさらに悪化するだろう。米中貿易戦争のほかに新型コロナウイルスが世界経済の動きを鈍くしており、外需の回復には時間がかかる。

日本経済は2008年の金融恐慌や2011年の東北大震災によって大打撃を受け、2009年の実質GDPは472.2兆円まで落ち込んだ。2010年は回復したが、翌2011年にはマイナスとなった。だが、2011年を底に回復し、2019年まで8年連続のプラス成長だ。このように成長は持続しているが、成長しているという実感はわかない。なぜだろうか。過去5年間の実質GDPを比較すると、実感のなさを裏付けることができる。

2019年の実質GDPは536.5兆円、5年前の2014年比25.9兆円の増加である。最大の増加額は民間企業設備の7.3兆円、次は公的需要の6.6兆円、3番目は外需の6.4兆円であり、最後が民間最終消費支出の2.7兆円、5年間で0.9%しか増えていないのである。さらに2019年の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)をみると、5年前を1.1兆円下回っている。この家計最終消費支出のマイナスこそが、実感を伴わない成長の原因なのだ。

名目GDPでも同じ傾向を読み取ることができる。2019年のGDPは554.4兆円、2014年比40.6兆円増、年率1.5%の成長である。ところが、当該期間の民間最終消費支出の増加額は5.7兆円、総増加額の14.0%でしかない。最も寄与したのは外需の13.9兆円、次が公的需要の9.3兆円、以下、民間企業設備の8.7兆円で最後が民間最終消費支出なのである。

2019年までの5年間の名目民間最終消費支出の年率の伸び率はたったの0.4%である。これでは景気が回復していると感じる人はほとんどいないのではないだろうか。最終消費支出がこれほど低い国は、米国はもとよりユーロ圏にも見当たらないはずだ。消費の異常な低迷の原因は企業の力が強く、雇用と賃金の決定権を握っており、非正規雇用の拡大と総賃金の抑制を図っているからである。

こうした総賃金の抑制による消費の低迷は日本経済の構造を変え、景気変動の振幅を大きくする。2019年の名目民間最終消費支出のGDP構成比は55.1%と2014年の58.4%より3.3ポイント低い。上昇したのは純輸出の2.7ポイント増、0.4ポイント増の民間企業設備である。民間最終消費支出の割合が低下する一方、純輸出や民間企業設備の比率が上昇することは経済の安定性を低下させることになる。世界経済の減速に伴い、純輸出の減少や民間企業設備の冷え込みがより顕在化することになれば、日本経済はそれらの大波に飲み込まれてしまうかもしれない。安倍政権はそういう不安定な経済の仕組みを過去5年で作り上げたのである。

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