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消費弱い米国経済と「棚から牡丹餅」の自民党

衆議院選で自民党が圧勝したことから、日経平均株価は1996年7月以来、21年3ヵ月ぶりに2万2000円台に乗せた。外人は4週連続で日本株を買い越し、これで日経平均株価は7週連続で続伸し、その間、2,734円も値上がりした。連騰も16日まで伸ばし、過去最長を記録した。NYダウも7週連続のプラスだが、値上がり率は、過去最高値を更新しているためか、日経平均株価の14.2%に対して7.5%にとどまっている。株式はこれだけ上昇しているが、商品市況は依然、昨年末を下回っており、10年債利回りも米国は昨年末レベルであり、主要国の利回りに大きな変化は見られない。
ECBは債券購入額を来年1月から今の月額600億ユーロから300億ユーロに縮小することに決めたが、必要であれば延長もあり得ると述べ、来年の利上げはなさそうだとの観測が浮上、対ドルでユーロは大幅に下落した。だが、主要通貨の対ドル相場はいずれも昨年末を上回っている。
株式に魅力を与え続けているのは、日本、ユーロのゼロ金利、米国の超低金利である。日本は安倍政権がさらに強化され、日銀の黒田総裁が続投し、現状の金融政策に変化はないだろうという期待が高まっている。日本同様、ECBはゼロ金利を続ける見通しだし、米国も利上げを続けるにしてもそのペースは極めて緩やかなものにとどまるのではないかという見方が支配的だからだ。
歴史的超金融緩和を長期的に継続しても実体経済の成長力は弱く、経済の体温は上がっていかない。超金融緩和策の効果が出現しているのは株式・債券市場だけである。資金コストを極端に引き下げ、中央銀行がマネーゲームを煽っている。株式・債券の本来の機能は資金調達を提供する場なのだが、そのような機能はとっくに失せて、流通市場としての機能だけが跋扈している状態である。
ゼロ金利の継続は株式買いだと市場参加者が考えていることが、株価を上げており、株価が上がるから、また株式を購入するという連鎖がいまのところ途切れることなく続いている。安倍政権が続くことが株買いだとみなが思えば、そうした期待が株価を上げていくのだ。そうした期待だけが独り歩きし、実体経済のことなど頭の片隅に追いやられてしまっている。今は世界的に期待先行で株式が買われているのではないか。
27日、7-9月期の米GDPが公表された。実質前期比0.7%と前期並みの成長であった。だが、個人消費支出は前期の0.8%から0.6%へと低下、特に、主力のサービスが0.6%から0.4%に鈍化したことが響いた。民間設備投資も前期の1.7%から1.0%に低下し、住宅は2四半期連続のマイナスである。寄与度をみると在庫と純輸出が0.2%、0.1%であり、これを除けば実質GDPは前期比0.4%しか伸びていないのである。
実質GDPの前年比伸び率は2.3%と2016年4-6月期を底に5四半期連続で高くなっている。ただ、個人消費支出は過去5四半期でもっとも伸びは低い。個人消費支出の勢いが弱いので、個人消費支出物価指数は前年比1.5%、食品・エネルギーを除くコアは1.3%に低下し、コアはFRBの予測値を下回っている。
米国でも個人消費支出が思うように増加しないのは、雇用者報酬の伸びが低いからだ。7-9月期の名目GDPは4.1%増加しているが、雇用者報酬は2.9%と1.2ポイントもGDPを下回っている。税金等を除いた可処分所得は2.7%と雇用者報酬よりもさらに低く、実質では前年よりも1.2%高いだけである。
可処分所得の低い伸びが、個人消費意欲が盛り上がらない最大の要因だ。9月の米失業率は4.2%と2001年2月以来、16年7ヵ月ぶりの低い水準に低下しているにもかかわらず、賃金は伸び悩んでいる。賃金が名目GDPよりも低い伸びに抑えられていることは、企業利益の取り分がより多くなっているということなのだ。しかも所得格差は縮小してはいない。「World Wealth & Income Data Base」によれば、2014年、米国では上位1%が所得の20.2%、資産の38.6%を所有している。所得も資産も1980年以降、急激に格差を拡大してきた。こうした所得や資産の偏在が個人消費の回復を阻んでいる最大の要因だと思う。

お粗末な民進党の分裂によって、戦々恐々としていた自民党は棚から牡丹餅である。相手が小池東京都知事であるにもかかわらず、身売りを総会で決めた民進党の思慮のなさ。浅はかな極みであった。まさに墓穴を掘るとはこのことかといえる前原代表の行動であった。前原代表を選び、前原代表に従った民進党、まったく不甲斐ない政党だ。からくも立憲民主党が結成されたが、権力闘争を戦い抜く気概は感じられない。
自民党は選挙公約に憲法改正を掲げていたが、有権者の関心は安倍首相に煽られた北朝鮮リスクなどに向いていた。憲法改正など厄介なことはお上に任せておけばよい、考えるのが億劫だという有権者の性質を安倍首相は把握していたのだ。主体性に欠け、自分の考えを表にださない国民性を自民党は上手に汲み取っている。
日本人の行動様式は戦前とまったく変わっていないのではないか。全体的には国に従順であり、集団に埋没していくことを好むのである。最近の数々の企業不祥事も集団主義の結果なのだと思う。だれがやったのか、だれが責任者なのかわからないという不思議な組織なのだ。森友学園や加計問題などもすべてが曖昧で、闇に葬られてしまう。問題を問題とせず、反省もなく、ただ時間が過ぎていくだけなのである。だから、同じ過ちを繰り返すことになる。あれだけ放射能をばら撒き、土地を追われたが、今回の衆議院選で福島は5人の自民党議員を選出した。沖縄でさえも自民党は2人を確保した。
安倍首相は憲法9条に3項を付け加える改憲を掲げている。高見勝利北海道大学名誉教授は「9条に3項を加えて自衛隊を明記し、2項と抵触する部分が出てくるなら、後から作られた方が生きる「後法優位」の原則から2項は死文化し、一部どころかフルサイズの集団的自衛権を認める道が開かれかねません」(朝日新聞、2017年10月13日、p.17)と警鐘を鳴らしている。小さな穴から土手が決壊するように、憲法9条が反故されようとしている。
小選挙区(289)と比例区(176)の比率が1.64倍と小選挙区重視になっていることが自民を有利にしている。一票の格差が依然2倍弱あることも都市部の野党の本来の実力を大いに削いでいる。比例では自民の総計に占める投票比率は33.3%であり、立憲19.9%と希望17.4%の合計37.3%よりも少ないのである。北海道比例区では自民の得票比率28.8%にすぎず、立憲26.4%とそれほど違わない。自民の比例区得票比率が2番目に低いのは東京の30.5%である。全有権者に対する絶対得票率では、比例区で自民は17.5%、小選挙区でも25.2%にすぎない。これだけの得票率で自民は284議席、61%を確保し、政治を支配できるのである。なんとも腹立たしいではないか。
★次号は休みます。

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