Share |

消費意欲の低下と出生数

トランプ大統領は舌の根の乾かぬ内に対メキシコ関税の発動の見送りを発表した。狼少年のような人が米大統領の地位についているのだ。このような大統領を下にも置かぬようにもてなす安倍首相、同類だから違和感を覚えることもないのだろう。取り巻きは忖度し、従うだけという情けない内閣だ。開催国としてG20財務相・中央銀行総裁会議を開いても米国に気遣い、「米国の保護貿易主義」に言及はしないという。5月のJ.P.Morgan Global Mfg PMIは49.8と6年7ヵ月ぶりに景気の境を示す50を下回った。なにのための会議なのか。世界経済の最大の問題を問題としない、ナンセンス極まる会議としか言いようがない。

5月の米雇用統計によれば、非農業部門雇用者は前月比7.5万人増にとどまった。3月、4月の数値も下方修正され、景気の先行不安を抱かせる内容である。賃金の前年比伸び率は3.1%とやや低下しつつある。5月の製造業ISMは52.1と2016年10月以来2年7ヵ月ぶりの水準に低下した。米国の保護貿易の推進により、モノの輸出入は前年を下回ってきた。4月の米国の輸出・輸入は前年比2.4%、0.9%いずれも減少し、世界経済と米国経済の減速を裏付けている。

4日、パウエルFRB議長は、通商問題の影響を「緊密に注視」し、「適切に行動する」と会合で発言した。経済や株式が不安定な動きをすれば、FRBは躊躇なく金融緩和することを改めて表明したのである。FOMCは来週の18日~19日、次は7月30日~31日開催され、遅くとも7月のFOMCで0.5%の利下げに踏み切るはずだ。ただ、10年債や株式はこの程度の利下げは織り込んでしまっており、たとえ利下げがあったとしても小幅な動きにとどまるだろう。

円ドル相場も利下げを織り込んでいるが、FRBの利下げは1回にとどまらず、9月以降のFOMCでも実施されるという期待から、円高・ドル安傾向は持続する見通しである。世界経済の減速によって、WTIも軟調に推移し、日本の貿易収支改善に寄与するだろう。米国の金融緩和傾向に貿易収支の改善が加わり、円高・ドル安と日本の株安が進行すると思う。

パウエルFRB議長の発言により、米株は反発したが、日本株の戻りは弱い。6月3日公表の『法人企業統計』によれば、大企業製造業の営業利益は前年比28.7%減と3四半期連続で前年を下回り、しかもマイナス幅は拡大している。輸出減による売上高の伸び悩みが粗利率を悪化させている。

鉱工業生産によれば、4月の資本財出荷指数(輸送機械除く)は前年比9.4%減と昨年12月以降5ヵ月連続のマイナスだ。昨年3月には10.8%も伸びており、資本財需要は様変わりしている。一方、在庫指数は7.3%と増加しつつあり、意図せざる在庫が積みあがっている状態だ。これから、資本財部門の不振が消費財部門へ波及していくだろう。

勤労者世帯の可処分所得は4月、前年比2.5%伸びているが、消費は0.7%に抑えられており、貯蓄により多く振り向けている。その結果、4月の平均消費性向は78.3と前年比4.4ポイント低下した。今年2月を除けば、昨年10月以降、平均消費性向は低下しており、勤労者世帯の消費意欲は慎重になっていることがわかる。

『消費動向調査』によると、「消費者態度指数」(二人以上の世帯、季節調整値)は2017年11月をピークに低下し続けており、5月は39.4と2015年1月以来4年4ヵ月ぶりの低い水準である。特に、「耐久消費財買い時判断」や「暮らし向き」の指標が良くない。

経済の先行きを良くないとみている家計の様子が、平均消費性向や消費者態度指数から見て取れる。これだけ、トランプ大統領によって仕掛けられた米中貿易戦争が常に話題になっていれば、普通、世界経済に対して良くないことが起こりそうだと想像させるだろう。そうした雰囲気が全体に行き渡れば、消費態度はより慎重になっていく。トランプ大統領の無分別な政策による不況が忍び寄ってきていることを家計は察知している。

それにしても日本の出生数はどこまで落ち込むのだろうか。厚生労働省の『人口動態統計』によれば、昨年の出生数は91.8万人と3年連続減で最小を更新した。第2次安倍政権が発足した2012年の出生数は103.7万人であった。その6年前の2006年は109.2万人であり、昨年までの6年間の減少がより加速したということがわかる。日本の最大の問題といってよい人口減、出生数減が改善どころか、一層酷い状態に陥っているのだ。6年以上、安倍政権はなにをしてきたのかと責めるべきだ。

女性が就業する上で、家計と子育てを支援する仕組みが未だに整っていないことが、現在の苦境を招いたと言える。核家族で家計を維持し、子供を育てることには障害が大きすぎるから子供を産みたくても産めない。60代や70代の男が支配している企業が、家庭や子育てに配慮してこなかった(見向きもしなかった)付けが回ってきている。企業だけで社会が成り立っているのではなく、家庭があり、政府もあるのが社会なのである。いずれの経済主体が問題を抱えていても、社会のバランスは保たれず、健全な社会とはいえない。

依然、企業本位制ともいえる仕組みが保たれている。長時間労働、少ない休暇が続く限り、出生数の回復はないし、人口減に歯止めはかからない。これだけ問題が大きくなっても、保育園や保育士の不足、保育士の低賃金の改善は一向に進まない。戦闘機の購入や福島原発廃炉費には湯水のように金を使う。まったく現実を直視しない無能な政府に叛逆しなければならない。

関連資料サイズ
190610).pdf417.73 KB