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米国経済弱く、物価下がる

「共謀罪」が成立し、「加計学園」問題もうやむやとなった。すべてがおざなりな言い訳に終始し、幕引きとなり、なにか胸がつかえ、わだかまりだけが残った。これだけ証拠を突き付けられても、知らぬ存ぜぬで押し通すことができ、だれも引っ摑まえることができなかった。日本の空には黒い雲が垂れこみ、不穏な空気が漂ってきている。個の力の弱い日本人では「共謀罪」を跳ね返すほどの力はなく、警察という国家権力によりさまざまな圧力を受けることになるだろう。人権侵害のような捜査が行われれば、直ちに対抗できるような制度を作る必要がある。泣き寝入りしてはだめだ。内閣府と文科省が共謀しても、勝手にやったのだととぼけているのだから、この手で「共謀罪」に立ち向かうべきだ。
銀座でもまだ「みかじめ料」なる暴力団の資金源があるのだから、全国でも同じ手口で暴力団は懐を潤しているのだろう。警察官は増加傾向にあるが、刑法犯認知件数はピークである2002年度の285.3万件から2015年度には109.8万件に激減している。これだけ犯罪が減少しているにもかかわらず、警察官が増加していることは、捜査に余力が生れていることを示唆している。「共謀罪」という捜査対象の広がりによって、国民の監視を強めることも考えられる。だが、「共謀罪」のような人権に関わる捜査ではなく、警察は「みかじめ料」のような身近な問題の根絶に取り組むべきだ。

FRBはFFレートを0.25%引き上げ、年1.0%とした。今年に入って2度目の利上げである。過去の利上げに比べると極めてペースは遅い。しかも、これで利上げは4回目だが、ゼロからの利上げなので、まだ1.0%という超低金利だ。FRBは、年末のFFレートは1.1%~1.6%、2018年末は1.9%~2.6%と予測している。
このような緩やかな利上げでも、実体経済は以前のような高い成長径路に戻ることができない。株式が過去最高値を更新しているのとは対照的である。超低金利でも資金需要は弱く、3ヵ月物金利の上昇は緩やかであり、10年物国債の利回りは低下する始末だ。国債利回りは昨年末に比べると30ベイシスポイント低下しており、長期の米成長率は弱いとみている。もはや、米国経済も金利、資金コストの引き下げでは成長率を引き上げることはできなくなっている。超低金利に反応するのは金融経済だけであり、そこから実体経済への回路も塞がれたままである。
1-3月期の米実質GDPは前年比2.0%と前期と同じ伸びだ。金融危機後、景気回復期(底は2009年6月)の実質経済成長率の最高は2015年1-3月期(3.3%)であり、今年1-3月期までに3%を超えたのは3回にすぎず、2%台が12回、2%未満が16回ともっとも多い。ゼロまで金利を引き下げ、さらに巨額の国債やMBSを購入しても成長率はまったく高くならず、実体経済と金融経済の歪みが大きくなるだけという弊害が目立つ。
今年3月末の米株式価額は40.7兆ドルと前年よりも5.2兆ドルも増加した。家計が株式の大半を保有しているが、直接保有とミューチュアルファンドの合計額だけでも25.8兆ドル、前年比3.2兆ドルの増加である。これだけ、株式価額が増加しても13.1兆ドル(今年1-3月期)の米個人消費支出を刺激しないのだ。株式と個人消費支出との相関関係はなくなってしまった。
今年1-3月期の株式価額・名目GDP比率は2.14倍と過去最高だ。名目GDPに比べて株式価額の伸びがより大きく、実体と金融とのバランスを欠いてきている。そしてトランプ大統領の放漫政策とイエレン議長の実体経済重視の金融政策が経済をさらに歪にしている。あまりにもモノとカネが乖離すれば、資本主義の矛盾を一気に解消する動きが起こるだろう。
FRBの実質GDP予測は今年2.1%~2.2%、来年1.8%~2.2%であり、ほぼ横ばいとみている。だが、最近の経済指標によれば、こうした低目の予測さえ達成できるかどうか疑問だ。5月の米小売売上高は前月比-0.3%と2月以来3ヵ月ぶりのマイナスだ。住宅着工件数も5月、前月比-5.5%も落ち込み、昨年9月以来8ヵ月ぶりの低い水準だった。
5月の鉱工業生産指数は前月比0.1%にとどまり、製造業については-0.4%と2ヵ月ぶりのマイナスである。好調なのは鉱業だけだが、それも最近の原油価格の下落などから先行きは不安。さらに鉱工業生産を牽引してきた自動車生産が失速しつつある。5月の自動車は前月比3.3%減少したが、すでに今年1-3月期にはマイナスに転じている。まだ自動車の生産水準は高く、問題は発生していないが、今後、生産が落ち込むことになれば、トランプ大統領ががなりたてるのではないか。
きわめて緩やかな利上げだが、住宅や自動車等の耐久財については前倒し需要が発生しており、その反動が現れているのかもしれない。鉱工業生産指数は2012年=100だが、5月の製造業指数(季節調整値)は103.3と伸びは緩やかな一方、自動車(部品含む)は129.1と製造業のなかでは断トツである。
穏やかな経済活動を反映して、5月の米消費者物価指数は前月比0.1%低下した。前月比の低下は2ヵ月ぶりであり、前年比では1.9%と3ヵ月連続の低下だ。食品・エネルギーを除く指数は前月比0.1%にとどまり、前年比では1.7%と低下傾向にある。原油価格は44ドル台と昨年11月半ば以来の安値を付け、さらに商品相場は昨年4月上旬以来に落ち込んでいる。こうした商品相場の下落は、米国の物価だけでなく世界的な傾向として表れるだろう。
金融当局がいくら力んでも物価を上げることはできない。貨幣数量説のお伽噺の世界で戯れている中央銀行では現実の世界をみることはできない。こうした人たちが金融政策を司っているとは嘆かわしいことだ。

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