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米株式価額、GDPの2.45倍に膨れる

米10年債利回りは一段低下し、3ヵ月物短期金利に接近してきた。来年、米国経済は減速すると見立て、将来の値上がりを見込んで国債の購入を積極化しているからだ。米債を購入する半面、米株を売るという姿勢を強めている。債券高株安は続くだろう。米債利回りの低下によって、ドルは安くなっている。ドル安により商品相場はやや戻したが、世界経済の減速には抗えず、軟調に推移し続けるだろう。OPEC総会で減産が決まったが、複雑な内部事情などから、減産が実行され価格に影響をおよぼすことができるかというと疑問だ。

11月の米雇用統計によれば、失業率は前月と同じ3.7%、非農業部門雇用者は前月比15.5万人と増加数は前月よりも8.2万人減少した。製造業は前月比2.7万人と前月並みだったが、自動車・同部品は0.8万人の減少だった。11月末にGMが工場閉鎖、人員削減を打ち出し、トランプ大統領は激昂していたが、GMの影響がでているのだろうか。

今年7-9月期のユーロ圏GDPの確定値は前期比0.2%と速報値と変わらなかった。プラスに寄与したのは主に在庫であり、在庫増がなければマイナスになっていた。前年比では1.6%と前期の伸びから0.6ポイントも低下し、減速がより強まった。前期比マイナスに転じたのは4ヵ国だが、そのなかにドイツとイタリアが入っている。

ドイツの鉱工業生産は10月、前月比-0.6%と2ヵ月連続のマイナスだし、資本財受注も10月、前月比0.3%と低迷している。7-9月期のドイツ実質GDPは前年比1.1%へと4-6月期の2.3%から減速したが、なかでも個人消費と輸出の伸びが0.6%、1.1%にそれぞれ低下したことが影響した。設備投資は前年比3.7%と依然底堅いけれども、最新の統計からは10-12月期は相当鈍化しそうだ。

ドイツ経済は輸出(GDPベース)・名目GDP比率が47.0%(2017年)と高く、トランプ大統領の仕掛けた貿易戦争による影響が出やすい。因みに、日本の輸出・GDP比率は17.7%とドイツの半分以下,経常収支ベースでも経常黒字・名目GDP比率はドイツの8.0%に対して日本は4.0%である。

ドイツの代表的株価指数のDAXは今年1月の過去最高値から20.7%も下落している。一方、ドイツ10年債利回りは週末、0.25%に低下した。ECBのゼロ金利政策と信用力によって、ドイツ国債の利回り水準は実体経済と掛け離れてしまっている。超低コストの資金調達を可能にし、設備投資を推し進めることができた。世界経済が拡大しているときには、海外で売りさばくことができるが、世界経済が減速すれば、在庫が積み上がり、設備投資は過剰になってしまう。ドイツの設備投資はしばらく低調な状態が続くだろう。設備投資が再び活況になるまでドイツ経済は持ち直すことはない。イタリア10年物国債の利回りは3.12%とドイツとの利回り格差は大きく、景気拡大を図るにはこれが足枷になっている。

これまで好調を維持してきた日本の大企業製造業の業績は失速しつつある。『法人企業統計』によれば、今年7-9月期の営業利益は前年比-6.1%と2016年7-9月期以来2年ぶりの減益となった。売上高が前年比2.1%に鈍化した一方、人件費の増加などで売上原価が2.7%増加したためだ。従業員給与は1.7%に抑制されたが、賞与が8.5%伸び、従業員給与・賞与の合計額は3.3%増加した。役員給与や福祉厚生費などを加えた人件費は2.8%増加し、売上高の伸びを上回った。

円ドル相場が大きくぶれていないことが製造業の業績を下支えしているが、急激な円高ドル安や世界経済の減速が強まることになれば、製造業の業績は大幅に悪化することになる。それだけ日本企業は外部変化に弱いのだ。2008年の金融危機のときも米国以上に製造業の業績は悪化した。そうした外部の変動に弱いという弱点は改善されたとはいえない。横並びで独立性に乏しい企業体質が大波に飲み込まれやすくしているのだと思う。

さらに日本経済が構造的な問題を抱えていることも、企業業績の変動を大きくしている。それは、GDPの主要項目である消費支出の割合が低く、設備投資の割合が高いという経済構造に由来している。日本の消費支出・GDP比率(名目)は昨年、55.5%だが、米国やドイツは68.4%、72.4%と日本を大幅に上回っている。他方、設備投資・GDP比率は日本の15.7%に対して米国とドイツは13.3%、10.3%であり、日本より低いのである。

消費は景気が悪くなっても、極端に支出を減らすことはないけれども、設備投資は景気の先行きに不安を覚えれば、一気に冷え込んでしまう。だから、設備投資・GDP比率の高い国は低い国に比べて景気変動の振幅が大きくなるのである。また株価のぶれも景気変動の振幅が大きい国ほど大きくなる。

今年9月末の米株式価額は50.6兆ドル(1ドル=113円で5,717兆円、日本の名目GDPの約10倍)、前年比5.5兆ドル増価し、米名目GDPの2.45倍だ。この株式価額・GDP比率は過去最高である。ITバブルの2000年3月末には2.12倍に上昇したが、その後1.12倍に低下、2007年9月末の1.87倍をピークに0.99倍に低下するなど、株式の拡大が実体経済をはるかに上回った後には、実体経済に収斂する傾向がある。過去のピークを上回る拡大をみせている米株式価額・GDP比率の修正は必至ではないか。

家計等の直接保有18.9兆ドルにミューチュアルファンドや年金等の家計間接保有17.1兆ドルを加えると36兆ドルになる。これだけ米国の家計は株式を保有しているにもかかわらず、個人消費へはほとんど寄与していない。その理由は、一般の家計はほとんど株式等を保有していないからである。米国では上位1割が株式や不動産などの資産の73%(2014年)を所有していることをみても、株高が消費に波及しないことがわかる。政治指導者も似た者同士だが、ロシアや中国を資産・所得格差の面からみれば米国に著しく類似している。

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