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米経済成長を決めるサービス支出伸び悩む

4月の米雇用統計がコンセンサスよりも良かったため、NYダウは3日、一時1万5,000ドルを超え、円安ドル高は99円台まで進行した。4月の非農業部門雇用者数は前月比16.5万人増加したことに、2月分と3月分の上方修正が加わり好感された。昨年の月平均非農業部門雇用者増加数18.2万人に比べれば少ないが、4月までの平均では19.5万人と昨年を上回るペースで増加している。政府部門の雇用は減少しているため、民間部門は17.6万人増加した。製造業は前月比横ばいだったが、サービス部門の雇用が18.5万人増、なかでも派遣労働者が3.08万人増え、企業は先行き雇用を拡大するのではないかという期待が強まった。ただ、週平均労働時間は前月比0.6%減少し、時間当りの平均賃金は0.2%増にとどまるなど、消費需要を刺激するほどの内容ではない。

失業率は7.5%と3ヵ月連続で改善、08年12月以来4年4ヵ月ぶりの低い水準に低下した。だが、失業者数は1,165.9万人に上り、雇用者を16歳以上の人口で割った比率は58.6%と09年9月以降58%台で推移している状態だ。昨年の年ベースでも58.6%だったので、変化はない。2008年の62.2%から2009年には59.3%に急低下し、2011年は58.4%と1983年以来の低い比率に落ちこんだ。いまの雇用増のペースでは雇用・人口(16歳以上)比率はなかなか低下しないだろう。2012年までの10年間の人口(16歳以上)は11.8%増加しているが、雇用は4.4%しか伸びていないからだ。雇用が人口の半分以下の伸びにとどまったため、失業者は過去10年で49.3%も増加した。

雇用者は増加しているとはいえ、米国経済は本調子でないことはあきらかである。4月のISM製造業・非製造業はいずれも前月を2ヵ月連続で下回り、経済は拡大しているものの、期待したほど上向いていないといったところか。

3月の米個人消費支出は前月比0.2%にとどまり、雇用環境が改善しているわりには伸びていない。個人消費支出が伸び悩んでいるのは、可処分所得の伸びが低いからだ。2012年の可処分所得は賃金・報酬と同じ前年比3.3%増であり、個人消費支出は3.6%増加した。実質ベースの可処分所得と個人消費支出は1.5%、1.9%それぞれ増加したにとどまった。可処分所得の伸びが低いのは賃金・報酬の伸びが低い半面、所得税の伸びがそれを上回っているからである。

 2012年の賃金・報酬は前年比3.3%増加したが、2013年3月は前年比2.5%と3ヵ月連続の伸び率低下だ。政府部門が0.6%と低空飛行を続けていることに、賃金・報酬総額の66%を占めるサービス部門が2.9%と2010年6月以来の低い伸びとなったからである。

 サービス部門の賃金・報酬が伸びなければ、賃金・報酬総額も伸びないが、なぜサービス部門の賃金・報酬が低迷しているのだろうか。それはサービスの消費が伸び悩んでいるからだ。3月の個人消費支出は前年比3.2%増加したが、そのうち消費支出の66%を占めるサービスは3.8%増加した。2010年半ば以降ほぼ3%台を維持しており、これが高くならなければ消費支出全体を底上げすることはできない。個人消費のサービス支出が伸びないので、サービス部門の賃金・報酬も高くならないのである。

 個人消費支出は財とサービスに大きく分類することができるが、財の伸びは3月、前年比2.1%とサービスの伸びを下回った。耐久財は5.4%伸びたが、非耐久財が0.5%と09年10月以来の低い伸びとなったからだ。個人消費支出のなかでも耐久財の伸びが高いのはFRBによるゼロ金利政策が効いているからである。特に、自動車を中心に耐久財が売れており、そうした耐久財支出の高い伸びの皺寄せをサービスが受けているのである。賃金・報酬総額がそれほど増えない状態で耐久財支出を増やせば、それ以外の支出は絞らざるを得ない。

 ゼロ金利政策により耐久財消費支出は拡大したけれども、サービス支出までには波及していない。ゼロ金利政策の限界が露呈しているといえる。米政府は財政赤字を減らそうと2011年、2012年と2年連続で政府支出を削減しているが、経済が適正成長軌道に乗るまえに、財政を絞れば、需要不足を来たし、米国経済は失速することになる。財政赤字ばかりに目を奪われていると、成長率の低下による機会損失は計り知れない規模になるだろう。ゼロ金利や巨額の債券オペでは米国経済を成長軌道に戻すことができず、資産バブルを再度発生させた。金融経済のバブルと低調な実体経済という矛盾を抱え込んでしまった。超金融緩和と緊縮財政という相反する経済政策が米国経済の不確実性を高めているのである。 

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