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米貿易戦争による円安ドル高

7月12日、トランプ政権は2千億ドルの対中追加関税を課すと発表し、貿易戦争はエスカレートの様相を呈しているが、ドルは上昇、米株式も反発している。対中関税を高くすることにより、米国経済は活力を増すことになるのだろうか。巨額の対中赤字がトランプ大統領の癇に障り、貿易戦争を厭わない政策へと邁進している。保護貿易はナショナリズムの発露であり、そうした思想が蔓延することは危険だ。世界経済のリーダーが頻繁に癇癪を起すようでは、混沌とした世界が待ち受けていると言わざるを得ない。

混沌とした世界に移行するなかで、米国はしたたかに歩むことができると考えているのだろう。広い国土に3億2,813万人もの人口、資源や農産物も豊かだ。関税を高くし、値段が多少上がっても十分にやっていけると踏んでいるのだ。むしろ、世界貿易の流れが悪くなり、貿易量が縮小してこまるのは米国以外ではないかと想定しているように思う。

米国の景気拡大は長期化し、完全雇用の状態にあり、この時期を逃しては、大胆な政策を実行する機会を逃してしまう、今こそ強行突破しなければとの思いであろうか。トランプ政権には保護貿易によって、南シナ海に橋頭保を築くなど海洋進出著しい中国を懲らしめたい意志が窺える。

2017年の中国の輸出額は22,634億ドル、輸入は18,409億ドル、黒字額は4,225億ドルであった。輸出は輸入の1.22倍であり、日本(2017年度、1.03倍)よりもはるかに比率は高く、0.81倍の輸入超過国である米国とは対照的である。中国経済の輸出依存度は大きく、輸出が減少することになれば、中国経済は大打撃を受けることになるだろう。報復措置は採るものの、中国の本音は経済への影響が大きくならない段階で手を打ちたいのではないだろうか。まさに米中の政治が火花を散らすことになるだろう。

日本の輸出・GDP比率は14.4%だが、米国は12.1%と日本より2.3ポイントも低い。特に、自動車の輸出(貿易統計)は6百万台、12兆円、同部品を加えると、約16兆円、輸出に占める割合は20.2%にもなる。もし、トランプ大統領が癇癪を起こし、日本からの自動車輸入に追加関税を上乗せすることになれば、対米自動車輸出4.6兆円が影響を受けることになる。

杞憂に終わればよいが、なにしろ気まぐれなトランプ大統領のこと、いつ災難が降りかかってくるか分からない。このところ頻発する自然災害だけでなく、トランプ大統領の胸三寸で決まる人災まで受けたらたまったものではない。安倍首相はそれこそトランプ大統領にゆめゆめそのような行動に走らないように諭してもらいたいものである。

米国の対中関税問題が拡大するにつれて、元ドル相場と中国株は下落傾向を強めている。為替や株式は米の対中関税による輸出の不振、さらに景気への悪影響を懸念しているのだ。上海総合は1月の高値から20.3%下落、元ドル相場は4月半ばから6.7%の元安ドル高である。米中間で貿易戦争が激化し、中国の輸出依存経済の弱点が露呈するにつれて中国株と元は値崩れしていくだろう。

6月の米消費者物価指数(エネルギー・食品を除くコア)は前年比2.3%と2ヵ月連続で上昇し、昨年1月以来1年5ヵ月ぶりの高い伸びとなった。一方、日本の消費者物価指数(コア)は2ヵ月連続で低下し、前年比0.3%である。日米の物価格差は円高ドル安方向に拡大しつつある。今は、米政策金利引き上げ観測が強まっていることがドル買いを誘っているが、物価の観点からは円買いが優勢になるはずだ。

中国ほどではないが日本も輸出超過国であり、輸出の停滞は国内景気に直結する。米国の理不尽な要求の餌食なる懸念が円安ドル高となっているのかもしれない。年6百万台もの自動車を輸出するということもやはり異常な状態だといえるだろう。これほどまで輸出しなければ日本経済や企業が成り立たないことも問題である。自動車輸出を突かれるだけで、日本経済は崩れてしまう、この構造的脆さを見直さなくてはいけない。ものが良くて、値段もそれに見合っているから売れるのだといっても、むやみやたらに売ることは相手にとっては決して快いことではない。やはり節度や思いやりはビジネスでも必要なのである。

 

★夏休みのためしばらく休みます。

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