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経済・株式から戦争法案へ

4月17日、0.07%まで低下していた独国債の利回りは先週、0.72%へと急上昇した。日本国債の利回りを下回るゼロに近い水準まで低下していたことへの反動だ。ECBの国債購入によって、欧州の国債相場は異常に高騰したが、そのつけが回ってきているのだ。独国債の利回り上昇によって、ユーロの魅力は高まり、対ドルの週末値は2月上旬以来約3ヵ月ぶりのユーロ高となった。ユーロ高ドル安に伴い、ドル建ての商品相場は持ち直し、CRBは昨年末以来の高い水準に戻った。

4月の独消費者物価は前年比0.4%と低く、3月の失業率も4.7%と前月と変わらなかった。1-3月期の独実質GDPは前期比0.3%と伸び率は前期よりも0.4ポイント低下した。前年比でも1.0%増と前期に比べれば0.5ポイントの低下だ。名目では前期比-0.3%と2四半期連続減となったが、前年比では3.0%増である。昨年の名目GDPは前年比3.3%であり、今年1-3月期はやや鈍ったといえるが、3%も伸びていながら、10年物国債利回りが0.1%を下回ることはいかにも異常である。

ユーロ高の要因は独国債利回りの上昇だけではなく、米国経済にも原因はある。4月末に1-3月期の米GDPが公表されたが、前期比実質0.1%と昨年の1-3月期以来の低成長である。個人消費支出が前期比0.5%と前期の1.1%から半減したほか、設備投資は-0.9%と2011年1-3月期以来4年ぶりのマイナスに転落したことが響いた。それでもプラスを維持できたのは在庫がGDPに0.2%寄与したからである。

 GDP物価指数は前期をやや下回ったため、名目GDPは前期比横ばいとなった。GDP物価指数を前年比でみると、昨年の1.5%から今年1-3月期には0.9%に低下し、FRBが注目しているPCE(個人消費支出)物価では前年比0.3%とFRBの予測を下回っている。GDPの伸び率低下や予想以上の物価の安定が、金利の引き上げ時期を後退させ、為替相場にも影響を及ぼしているのである。

1-3月期の米国経済の足取りの重さが確認されたが、4-6月期についても、低迷がつづきそうな情勢である。4月の小売売上高は前月比横ばいとなり、勢いは持続しなかった。前年比では0.7%に低下し、1月の3.4%から大幅に鈍化した。4月の鉱工業生産指数は前月比-0.3%と5ヵ月連続のマイナスとなり、明らかに変調を来たしている。昨年の夏以降の原油価格の急落によって、シェールガス等の掘削需要が激減している。昨年末までは安定していたが、年明け以降、減産が強化され、4月の掘削関連は前月比14.6%、前年比48.2%も落ち込んだ。ただ、ウエイトは小さく、鉱工業生産指数を前月比0.1ポイント、前年比では0.4ポイントの引き下げにとどまる。エネルギー全体では前年比1.2%と非エネルギー(2.2%)を下回るもののプラスを維持している。

4月の生産者物価指数は前月比-0.4%と2ヵ月ぶりのマイナス、前年比では-1.3%と3ヵ月連続のマイナスとなった。エネルギーが前年比24.0%も低下したことから、これだけで最終需要物価指数を前年比1.5%引き下げた。ただ、サービス価格も前年比0.9%へと鈍化しており、生産者物価指数の前年割れは続くだろう。

 1-3月期の独GDPは前期比0.3%増と前期の伸びを下回ったが、ユーロ圏は0.4%と前期を0.1ポイント上回った。ユーロ圏は米国よりも成長率は高いが、それでも景気が良いというほどではない。このような欧米の経済状態を反映して、日本経済も消費や生産は不振である。3月の「家計調査」によると、消費支出は名目8.1%、実質10.0%それぞれ前年を下回った。前年の駆け込み需要の反動といえるが、名目を2年前に比較しても0.4%増にとどまる。

消費の低迷は所得が伸びていないからだ。勤労者世帯の可処分所得は名目1.7%増だが、実質では1.1%減と2013年8月以降、20ヵ月連続のマイナスである。「毎勤」の現金給与総額でも前年比0.1%だが、実質は2.6%減である。現金給与総額は1-3月期、前年比0.2%の伸びにとどまり、7-9月期の1.1%から2期連続で低下している。名目の手取りが伸びなくなれば、財布の紐が堅くなるのは当然である。

 鉱工業生産は1月急増の反動もあり、3月も前月比-0.3%と2ヵ月連続減である。だが、在庫は思うように減少せず、2ヵ月連続増となり、2009年2月以来約6年ぶりの高水準に上昇した。特に、在庫を多く抱えているのは、資本財(輸送除く)であり、3月の季節調整値(151.4、2010=100)は金融危機後の2009年3月を抜き、2000年2月以来約15年ぶりの高水準に積み上がった。これだけ在庫が急増しても、3月の資本財生産は1.2%前年を上回っている。

 資本財在庫が著しく過剰になっていることなどお構いなしに、日経平均株価は高水準を保っている。4月末値の日経平均株価は前年を36.5%上回っており、これで30ヵ月連続のプラスで、90年代以降では最長だ。これまで日銀の国債買いと円安で株高を煽ってきたが、化けの皮も剥がれて、株高誘導政策は限界に達したといえる。

 安倍内閣の最重要課題は経済や株式ではなく、安全保障政策(戦争政策)に移った。14日、安全保障政策法案を閣議決定、15日、国会に提出した。安倍首相は国会を延長して、なんとしてもこの法案を成立させたいのだ。米国等の戦闘行為に助太刀したいという。戦争を止めるのではなく、戦争を拡大させることになる。憲法9条を反故にすることだ。子供の喧嘩でもそれに加わることが正しいとみなされる。互いに味方を集め、喧嘩はますます激しくなるだろう。

 憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれ、憲法99条では「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」。安倍内閣の戦争法案の閣議決定や国会提出は憲法を蔑ろにし、憲法違反にあたる。戦争や武力行使で国際紛争を解決できないことは戦後の歴史を少し顧みるだけであきらかである。戦後70年の日本の平和は憲法9条によるものだ。

平和でなければ経済も成り立たない。国会に提出した戦争法案は日本の安全を脅かす。成立するようなことになれば、日本の自律性はますます失われ、日本経済は新たな危険を背負うことになる。株式や為替は瑣末な事柄となる。

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