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給付金は貯蓄され日銀の国債・上場投信買いの資金に

6月の『家計調査』(二人以上の世帯)によれば、10万円の特別定額給付金がかなりの世帯に届き、勤労者世帯の実収入(勤め先収入のほか、事業・内職収入、社会保障給付、財産収入などを含む)は前年比15.7%増加し、5月(9.8%)よりも伸びは高くなった。実収入が2桁増になったのは、給付金が全国に行き渡っているからだ。『家計調査』の給付金を示す「他の特別収入」は150,704円、前年同月の4,590円の32.8倍に急増した。5月も39,234円に拡大し、実収入を引き上げている。ただ、6月までに給付金は全国民に届いてはいない。5月と6月の「他の特別収入」の合計額は189,938円であり、勤労者世帯の世帯人員(3.31人)から推計すれば、141,062円の給付金がまだ給付されていないことになる。7月以降も給付金が実収入を引き上げることになるだろう。

給付金が実収入を増やし、可処分所得を押し上げたが、勤労者世帯の消費支出は前年比-3.3%と4カ月連続のマイナスである。5月の-15.5%からはマイナス幅は大幅に縮小したが、可処分所得の急増にもかかわらず、家計は引き続き消費抑制姿勢を保っているといえる。

勤労者世帯の可処分所得から消費支出を除いた貯蓄は545,479円、前年比36.1%だ。給付金には手を付けず、直ちに貯蓄に向かったのである。平均消費性向は35.4%、前年よりも8.1ポイント低下し、昨年の10月以降、9カ月連続で前年を下回る。無職世帯の貯蓄も274,699円に急増しているが、そのうち117,495円は給付金である。無職世帯への給付金が届いているのは50%未満である。申請期限は居住市町村によってまちまちなので、高齢独居世帯などでは申請していない、申請できない住民もまだまだいる。

6月の勤労者世帯の貯蓄から総貯蓄額を推計すると15兆円超、無職世帯を加えれば約22兆円となろう。6月は賞与月なので貯蓄は他の月の何倍にもなる。2019年の勤労者世帯の総貯蓄は約53兆円と予想される。6月だけで年間勤労者世帯貯蓄の3割弱を占めることになる。

政府が定額給付金を全国民に給付しているが、大半は貯蓄に回り、消費を底上げする効果は期待外れに終わった。貯蓄は金融機関に預けられ、金融機関の預金は日銀当座預金に向かい、日銀はそれで金融機関保有の国債や上場投信を購入する。大量発行の国債を消化するための役割を定額給付金は担った、と見て取れる。

日銀の『貸出・預金動向』によれば、6月の3業態計の預金(平均残高)は前年比8.0%伸びた。1-3月期は3.0%だったが、月を追うごとに伸び率は高くなっている。なかでも都銀は10.2%と地銀などとの伸びの格差は拡大しつつある。持続化給付金等で貸出の伸びも高くなり、銀行計では1-3月期の2.1%から6月には6.5%へと拡大している。貸出でも都銀が優位なのか、1-3月期の1.9%から6月には8.6%へと急拡大である。

7月のマネタリーベース(MB)は前年比9.8%伸びたが、その理由はMBの約8割を占める日銀当座預金が11.0%も伸びたからだ。金融機関の預金が増加するにつれて、日銀当座預金も拡大していく関係がはっきりあらわれている。6月の3業態計の預金は727.8兆円、前月比14.1兆円、前年よりも58.3兆円も増加している(都銀だけで前年比38.9兆円増)。6月の勤労者世帯の貯蓄急増と金融機関の預金増の関係には、正の相関関係を読み取ることができる。

『家計調査』によると、勤労者世帯の貯蓄は2015年以降5年連続の前年比プラスで、2019年を2014年と比較すると45.8%も増加している。2019年の実収入は2014年比12.8%増加しているが、消費支出は1.6%とほぼ横ばいであり、消費支出を抑制することによって貯蓄増を図ったのである。

消費支出をむやみに増やせない事情もあった。過去5年間で実収入は2桁増だったが、世帯主収入は5.7%にとどまり、寄与度は4.5%、定期収入に限れば1.8%と微増であり、その寄与度は1.2%に過ぎない。第2次安倍政権発足後も世帯主の定期収入はほぼ横ばいであり、増加したのは賞与の部分なのである。2019年の世帯主定期収入はリーマンショックの2008年以下だし、19年前の2000年を6.4%も下回っているのだ。2019の賞与も2000年比では0.5%の増加にとどまる。一方、過去5年間で配偶者収入は38.0%増加し、金額では世帯主の増加額とほぼ同じであった。非正規雇用での配偶者の収入(2019年月平均、83,468円)が世帯の収入増に大きく貢献している事実が、先行きを慎重に捉え、世帯の消費支出抑制に繋がっているように思う。

新型コロナの感染者数が拡大していることも、企業や雇用に不安を投げかけている。6月の失業率は2.8%と前月よりも0.1ポイント低下したが、有効・新規求人倍率は低下しており、休業者も236万人いる。消費の低迷や輸出不振によって、特に体力のない中小企業は年末にかけて厳しい状況に追い込まれるだろう。

6月の就業者は前年比77万人減少したが、完全失業者は33万人増にとどまり、非労働力人口が36万人増加した。仕事を諦め就職活動をしない人が増えており、これらの人が失業者になれば失業率は3%を突破する。新型コロナが続けば、企業は休業を維持できず、休業から失職というケースも増えるだろう。そうなれば年末には失業率は4~5%に上昇することになる。

産業別就業者数の前年比減少数は6月、最多は宿泊、飲食業の38万人、次が建設業の31万人、3番目が生活関連、娯楽の22万人となっている。建設業は3カ月連続の前年比マイナスであり、しかも減少数が2番目となり、先行きを不安にさせる。

6月の新設住宅着工件数は前年比12.8%と3カ月連続の2桁減だし、住宅を含む建築物計(床面積)は前年比-16.0%、工事予定額も-12.7%と悪化している。建築物計は昨年の夏以降減少傾向が顕著になってきており、新型コロナがすでに不振に陥っている建築に一層打撃を加え、建設業関連の雇用環境は厳しさを増すのではないだろうか。

 

 

■次号から数週間、休みます。

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