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自ら墓穴を掘る日本企業

日経平均株価は5週連続高となり、今年3月第5週以来の高い水準だ。円ドル相場が昨年4月第1週以来の円安ドル高に振れたことなどから、日本株が買い進められている。だが、こうした円売り日本株買いの投機的商いも最終局面に差し掛かっている。いつまでも日本の実体経済を無視して、そのような取引を継続することはできない。まさに、ババ抜きの場面だといえる。

 12月調査の『短観』によると、全規模全産業の業況判断DI(「良い」-「悪い」)は9月比3ポイント低下のマイナス9に悪化した。先行きはマイナス15と一層悪くなる見通しだ。特に、製造業は前期比7ポイント低下のマイナス15へと落ち込み、先行きマイナス20と予想されている。国内需要が弱いところへ世界経済の低迷により、輸出が減少していることが、製造業を苦境に追い込んでいる。

 全規模全産業の今年度上期の売上高は前年比1.9%(9月調査は2.7%)、下期は0.1%(同0.8%)といずれも下方修正された。経常利益は上期-3.0%(同-8.4%)、下期0.7%(同9.7%)と上期は上方修正され下期は下方修正されている。だが、下期の売上高がかろうじてプラスと上期よりもさらに低迷するにもかかわらず、経常利益は微増を見込む。設備投資計画をみても、下期は前年比2.9%(同-3.0%)と上方修正されており、売上高の伸び悩みからは矛盾する予測である。

米鉱工業生産指数は11月、前月比1.1%も伸びたが、これはハリケーンの一時的需要増による増産であり、長続きはしない。ハイテク生産指数は-0.2%と2ヵ月ぶりにマイナスになるなど米製造業の足取りは重い。12月のユーロ圏PMI総合指数は引き続き50を下回り、実体経済の縮小は続いている。このような欧米経済をみると、まだ輸出は回復せず、製造業は厳しさを増し、下期の経常利益の前年割れは避けられないと思う。

今日の選挙でどのような結果になるにせよ、長期的には日本株は下降トレンドを辿らざるを得ない。各政党の経済政策によって、日本経済や企業収益の衰えを取り戻すことはできないからだ。なにしろ、生産年齢人口(15歳~64歳)は2010年までの10年間に448.5万人減少したが、2020年までの10年間では832.7万人も減少する。ほぼ年率1%の減少である。生産年齢人口が832.7万人減少する一方、65歳以上は664.0万人増加し、14歳以下は337.5万人減少する高齢者社会に激変する。総人口も2020年までの10年間では約4%減少する。

 政党が目指す名目3%成長などまさに夢物語なのである。2010年までの10年間の名目GDPがマイナスになっていることをみても、2020年までの10年間がさらに落ち込むことは自明のことなのである。総人口の減少に加え、働き盛りが800万人以上いなくなり、65歳以上が急増することは衣食住すべてにわたり、需要が減少することを示している。これからは、いかに経済の規模を小さくし、質的に高めていくかが最大のポイントになる。

そうした事実を省みない政党の吹聴が多くの従順な国民を惹きつけるのだろう。原発が安全だと訴えることとなんら変わることはない。エコノミストも知ってか知らないのか、日本経済の実態について語ることはない。エコノミストも原子力村とまったく同じ構図になっているのである。空想を語っていれば金になるからである。最悪の事態を考えておくことが大事だとは思ってみても、村八分にされることが怖いのだ。

日本経済は規模が小さくなるプロセスを歩んでいるが、企業のバランスシートは肥大している。資産を持ちすぎなのだ。多くの資産を保有しているが、それに見合った収益を上げていない。無駄な資産を保有すれば、コストが余分に掛かり、収益力は衰える。1980年代、バブルで日本経済は沸き、企業は経営に不必要な土地や株式まで多量に抱え込んでしまった。そうした経営体質がいまも継続しているのである。いや、バブル期よりももっと過剰に資産を保有している。

大企業(法人企業統計、資本金10億円以上)の1989年度末の総資産は455.1兆円であったが、2011年度末には728.3兆円と1989年度末の1.6倍に膨れている。が、売上高は1989年度の477.4兆円に対して、2011年度は537.9兆円と1.1倍しか拡大していない。1989年度では売上高が総資産を上回っていたが、2011年度は総資産が売上高をはるかに超えている。総資産・売上高比率は1980年度には71.4%まで低下していたが、バブルが膨れるにつれて上昇し、1989年度には95.3%に上昇した。バブルの破裂に伴い、総資産・売上高比率は低下すると考えられるが、予想に反して、上昇し続けていたのである。2011年度には135.4%と1960年度以降では最大となり、日本企業は過剰資産で押しつぶされようとしている。

製造業の総資産・売上高比率は2011年度117.3%、1989年度比15.7ポイント上昇しているが、非製造業は149.4%と同58.1ポイントも高くなっている。もちろん過去最高であり、非製造業の総資産の異常な膨張が、非製造業の収益圧迫要因になっていることは間違いない。非製造業の資産をみると、2011年度末、土地は43.1兆円、株式等の「投資その他の資産」は161.2兆円といずれも過去最高であり、土地は1989年度末の2.9倍、「投資その他の資産」は4.9倍に急増している。バブルで被った痛手の反省など感じられない投資行動である。土地と「投資その他の資産」の合計額は204.3兆円、総資産の45.0%を占めている。株式等を保有してもそれらは売上にはなんら寄与しない。有価証券で仕事をするのであれば金融業であり、看板を付け替えなければならない。本業と関係のない資産保有に走ることは本業を逸脱し、経営の王道から外れることになる。日本には自ら墓穴を掘っているような企業のなんと多いことか。 

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