Share |

落ちるべくして落ちる日本

6月末の日経平均株価は前月末を下回り、小幅だが2ヵ月連続のマイナスとなった。6月末の前年比上昇率は51.9%と依然異常に高い伸び率であり、このような状態を維持することはできない。1997年4月の消費税率引き上げのときは、その4ヵ月前に、日経平均株価は前年を下回った。1989年4月のときはバブル絶頂期にあったためか、11ヵ月後に前年割れと反応は遅れた。が、その後は、暴落という無残な結末となり、いまだに株価はピークの三分の一ほどの低い水準にある。

消費税率の2度にわたる無謀な引き上げを控え、株式は再び悲惨な事態に陥ることは不可避である。来期以降の企業収益は急激に落ち込むことがわかっているからだ。1989年度の大企業営業利益は、バブルの渦中にあり前年比10.1%伸び、バブルの余韻などで1990年度も7.6%増加したが、営業利益は1990年度をピークに1993年度まで3年連続の前年割れとなる。1993年度までのピークからの減少率は22.2%であったが、バブル崩壊に伴う特別損失の拡大から当期純利益は同期間63.6%もの大幅減に見舞われた。

1990年代前半のバブル崩壊期に不良資産の膿を出し切ってしまっていれば、その後の企業体質は改善し、収益基盤も強まっていたが、残念ながら、日本企業は不良資産を小出しに処理するにとどまり、いまだに不良資産を抱えているのである。

1997年4月に消費税率を引き上げたが、バブル体質を引きずったままの日本企業は売上減に見舞われるとたちまち行き詰まってしまった。1997年度は増収にはなったが、販売管理費が嵩み、営業減益となり、杜撰な不良資産処理の付けにより、特別損失が急増、当期純利益は35.5%も減少してしまった。

1997年11月には北海道拓殖銀行、山一證券が破綻し、そうした金融恐慌の影響から経済は急速に悪化していった。1998年度の企業業績は惨憺たるものとなった。売上高は7.0%減、営業利益と当期純利益は16.0%、94.4%それぞれ減少し、株価はバブル崩壊後の最安値を更新した。

来年4月の消費税率引き上げにより、企業収益は間違いなく悪化する。しかも1990年代よりも経済を支える土台が軟弱になっており、前回引き上げ時よりも経済に及ぼすインパクトはより大きい。しかも2度の引き上げで2倍になるのであるから、日本経済の消費行動は大きく変わることになると思う。家計は財布の紐をきつく縛り、消費支出を見直すはずだ。消費が少なくなれば、設備投資はますます冷え込み、経済は激しく収縮することになるし、企業業績も当然悪化するだろう。

変えるべきところをすこしも変えず、憲法改正、原発推進では日本沈没を加速させるだけである。安倍首相は天皇を元首、自衛隊を国防軍に変えることで、威勢のよい右派を勢いづかせる方向に舵を切っているが、こうした考えは、日本の立場を危うくし、世界を緊張させるだけだ。それにしても日本の経営者は、安倍首相のこうした立場が、日本企業のリスクを高めているとは思わないのだろうか。特に、最大の貿易取引地域であるアジアでの緊張が高まれば、日本経済にとって致命傷になる。

個人の自由を縛ることは、なによりも問題である。自由な思考、活動によってのみ新しいものが出来上がるけれども、憲法を改悪し、その首根っこを国に掴まえられれば、日本は閉塞状態に追い遣られ、すべてが沈滞することになるだろう。

 自民党の政策に賛同して、電力会社の総会で銀行や機関投資家が原発推進に賛成している。なにひとつとっても解けない問題を抱えている原発を廃絶したい気に、どうしてならないのだろうか。原発を推進すればするほど、核廃物で身動きが取れなくなる。すでに東電に巨額の国の資金が投入されているが、結局は税金で尻拭いしなければならないのである。これから先、何10兆円掛るかわからない税金が溝に捨てられるのである。捨てた分だけ日本は貧しくなり、そのことだけでも遣り切れないが、企業と自民党などは平気なのだ。目先の利益にありつくことができればそれでよいのであり、後は野となれ山となれだ。

福島原発だけでも手に負えないが、さらに稼動させ、核廃物の山をつくり、核燃料サイクルというとんでもないばかげたことをやっていこうと言い、また国民はこうした政策に賛成するのであるから、日本という国は地に落ちたといえる。

日本人の精神構造は戦前と少しも変わっていないのだ。個がなく幼稚で長い物には巻かれろ、だからすこし声の大きいほうに向いてしまう。理屈とか背景を確かめることなく、メッセージが分かり易いものであれば集う。小泉元首相の「構造改革なくして景気回復なし」、「自民党をぶっ潰す」が受けたのと同じ手法を安倍首相も踏襲し、それが奏功しているのだ。

だが、これまでの口から出た言葉によって、政治、経済が良い方向にいったためしがないのである。株価のように一時的に舞い上がっただけで、結局はなにも残らないばかりか、一層、日本は酷い状態に落ちぶれたというのが真相ではないだろうか。「構造改革」と毎度お題目のように唱えているが、1票の格差是正という政治の「構造改革」さえできない。ましてや、官僚機構の抜本的改革や大学改革、企業統治など成果はゼロである。

これだけ大学進学率が上昇しているにもかかわらず、日本の知的水準は上がらず、安倍首相の経済政策に疑問を抱かない。採用に学部を問わず、入社すれば相も変わらぬ移動人事、日本は落ちるべくして落ちているのだ。得てして、問題にすべきことを問題にせず、問題にしなくてもよいことを問題にする、無駄な時間だけが過ぎていく。日本はそういう国なのである。

関連資料サイズ
130701_.pdf403.39 KB