Share |

賃金の抑制で利益を貪る企業

衆議院選後の政治の姿を見通すことは難しいが、自民、希望、維新の右派が勢力を増し、これまでの国家主導の企業優先政策が継続され、公的資金と日銀の株式購入姿勢も変わらず、株式参加者は、株式は底堅く推移するだろうとみている。選挙はある種の祭りのようなものであり、短期間に金を散財し、景気を刺激する効果があるとみられている。こうした楽観的な見通しに加えて、米株式が過去最高値を更新していることも、強気派を勇気づけている。強めの米経済指標の発表が円安ドル高をもたらし、日本株も年初来高値を更新している。日経平均株価は過去1ヵ月で6.9%、1,333円も上昇し、主要国の株価指数でも最大の伸びをみせている。

9月調査の『短観』が公表されたが、大企業製造業の業況判断は6月調査より6ポイント改善し、22へと改善した。これは2008年の金融危機が起こる前の2007年9月(23)以来、10年ぶりの高水準である。大企業非製造業の業況判断は23と前回と同じであり、約4年高水準が続き、10年前の水準よりも高い。2015年9月、12月の非製造業業況判断は9月よりもやや高い25であったが、これは1991年12月(33)以来約24年ぶりであった。
業況判断は「良い」から「悪い」を差し引いた数値であり、調査には「良い」、「悪い」のほかに「さほど良くない」という項目があり、大企業製造業、非製造業のこの割合は68、69である。大企業でも「さほど良くない」の割合が7割近いが、今年度、大企業製造業の売上高経常利益率は7.47%と過去最高を更新する計画であり、非製造業も5.62%と高水準を維持する見通しである。売上高経常利益率は製造業、非製造業ともに1980年代後半のバブル期を上回っており、特に、非製造業は長期的に改善傾向を示している。
こうした好況感や高利益率が株高要因と考えられるが、実際の日本経済の様相は好況感や高利益率とは反する内容となっている。2016年度の名目GDPは537.9兆円、前年比1.1%増加し、2012年度以降5年連続のプラスである。だが、大企業製造業の業況判断は2007年以来の好況を示したが、2007年度の名目GDPは531.0兆円であった。2016年度の名目GDPは2007年度より1.3%、6.9兆円上回っているにすぎない。2016年度の家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く、以下同様)は243.4兆円、9年前と比べて0.7兆増にとどまる。2007年比で民間住宅と民間設備投資はいずれも微減、純輸出は約4兆円減少した。増加したのは政府最終消費支出であり、10.1兆円も伸びており、公的支出の拡大によって、名目GDPは拡大したのである。
安倍首相が再度登場した2012年度を2016年度と比較すれば、名目GDPは43.3兆円の増だが、もっとも拡大したのは純輸出の13.9兆円、民間設備投資も10.7兆円増、家計最終消費支出は8.9兆円増であった。この間、消費税率が3%引き上げられ、名目GDPは物価上昇分嵩上げされており、数字ほどには経済は良くなっていない。
2016年度の名目GDPは2012年度比8.8%伸びているけれども、雇用者報酬は6.1%と名目GDPを下回り、家計最終消費支出は3.9%とさらに低い伸びにとどまっている。4年間の伸びが3.9%ということは、年当たりの伸び率は約1%ということになる。しかも、消費税率の上昇を除けば、過去4年間、家計最終消費支出の伸びはゼロに近いといえる。
さらに、2016年度を2007年度と比較すると、名目GDPの1.3%に対して、雇用者報酬は2.1%、家計最終消費支出は0.3%とほとんど経済は停滞した状態にある。消費税の引き上げを加味すれば停滞どころかマイナスになる。
他方、企業業績は極めて好調であり、利益関連の指標はいずれも過去最高を更新している。『法人企業統計』によれば、2016年度の営業利益は58.7兆円、2012年度比46.7%、当期純利益は49.7兆円、同108.7%と2倍超に拡大している。当期間、売上高は81兆円、5.9%の増加にとどまるが、人件費は5兆円、2.5%増と売上高の伸びをはるかに下回り、こうした人件費の極度の抑制が、売上高が伸び悩みながらも高収益を上げている最大の要因なのである。海外の低賃金労働者を雇い暴利を貪るのと同じ方法を国内でも採っているということだ。
1990年代初め以来の雇用不足に陥っているが、賃金が上昇する気配はまったく窺うことができない。労働組織率は低下し続けており、日本ではもはや労働組合の力は完全に削がれてしまっている。非正規労働者が37.5%(8月の『労働力調査』)も占めるようでは、正規労働者はそれだけで優遇されており、労働組合活動に本腰を入れるような組合員はいなくなる。
日本は経営者天国である。民主主義国家でありながら、企業という独裁制度がそのなかに組み込まれている。初めから民主主義は矛盾を抱えていたのである。独裁組織だからいつまでたっても賃金や雇用環境は労働者を苦しめ、命さえ奪ってしまう。こうした災難を防ぐためには、経営者天国を終わらせる以外に方法はない。そのためには経営者に対抗できる組織を育てることが不可欠である。
第2次安倍内閣発足以降の日本経済の足取りをざっと振り返っただけでも、家計消費は沈滞から抜け出しておらず、企業だけがひとり我が世の春を謳歌している歪な日本経済の現状がくっきりと浮かんでくる。歪んだ経済を正常にするには、企業の余剰資金を家計に振り向けることが必要である。企業の巨額内部留保を労働者に配分していくことが、日本経済を良くする方法だと思う。使い道のない金を溜め込むだけの経営を変えていかなければならない。

関連資料サイズ
171009).pdf404.54 KB