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資産効果が現れない米国経済

NYダウは頭打ちになってきている。米国経済の成長ペースは緩やかであり、企業利益も高い伸びは期待できない。株価が高水準を維持できているのはゼロ金利等によるもので、実体経済を反映したものではない。国債等の償還資金を再投資していることからFRBのバランスシートは10日、4.46兆ドルと高原状態を続けており、ピークからの減少額はわずかだ。異常な金融政策をすでに6年以上続けているが、実体経済への影響は乏しく、金融経済の肥大化を促進させているといえる。だが、金融経済の肥大化だけでは実体経済は良くならないことがあきらかになった。株式の家計の直接保有額は3月末、13.6兆ドル、保有比率は37.0%、投資信託を入れれば57.3%に達するが、消費支出は伸び悩んでいる。

5月の米小売売上高は前月比1.2%の高い伸びを示したが、前年比では1.0%の低い伸びであり、米国経済を左右する消費は回復とはとてもいえない。4月の在庫・売上比率は昨年秋以降上昇し、高止まったままである。生産者物価指数の前年割れは続き、物価はデフレ気味である。

株式が過去最高水準にありながら、消費が思わしくなく、したがって米国経済も元気がない。こうしたことは過去には稀であり、通常、株式が高騰をつづけていれば資産効果が消費に現われ、好景気をもたらすはずだが、今回そのような効果はあらわれていない。

11日、FRBが公表した『Financial Accounts of the United States』によると、3月末の家計部門の総資産は99兆ドルと過去最高を更新し、2009年末比37.0%増、金額では26.7兆ドルも増えた。前年比でも4.9兆ドル、123円で換算すると602兆円と日本の名目GDPをはるかに上回る。これだけ、資産が増加しても消費支出がなかなか伸びないのである。

 3月末の家計部門の総資産は2009年末比37.0%増加したが、非金融資産は25.2%増にとどまる。非金融資産の大半は不動産だが、サブプライムローンの崩壊で暴落した住宅価格も回復に向かい、不動産は28.6%増だ。総資産の7割を占める金融資産は42.7%も増加した。特に、伸びが著しいのは株式と投資信託で、88.1%、93.1%それぞれ伸びた。株式と投資信託の合計残高は3月末、21.5兆ドル、2009年末から10.2兆ドルもの増大である。年約2兆ドルの増加は米名目GDPの個人消費支出(12兆ドル)に比較しても少ない金額ではない。それでも個人消費支出は緩やかな伸びから抜け出せないのである。

住宅モーゲージの残高は9.3兆ドル、2009年末比10.0%減少していることから、家計部門の総負債は14.1兆ドルと2009年末比0.6%の微増である。負債がほとんど横ばいである一方、資産が37.0%も拡大したため、純資産は84.9兆ドル、45.7%も増加した。米国の家計部門の総資産に占める純資産の比率は85.7%と2000年9月末以来15年半ぶりの健全なバランスシートになった。

 米家計の純資産が急増し、バランスシートが健全になっても、消費支出の足取りが鈍いのは金融経済の先行きを不安に思っているからではないか。株式がいつまでも上昇を続けることはなく、いつか激しい調整に見舞われることになるとの気持ちが心の片隅にあるからだろう。

 米株が高騰をしたのは、FRBの金融政策によるところが大きく、金融政策が正常な姿に戻ることになれば、金融部門はコスト増となり、縮小せざるを得なくなる。株式価額が名目GDPの2倍を超える事態は異常である。名目GDPが前年比3.6%も伸びながら、政策金利がゼロで10年物国債の利回りが2.4%というのは、実体経済と金融経済の釣り合いが取れていないことを証明している。

 こうした実体経済と金融経済の不均衡は米国だけでなく、ゼロ金利を続けている日欧でも顕著である。世界的に利上げが実施されることになれば、金融経済の収縮は避けられず、これまで経験したことのない経済的混乱が起こるかもしれない。マネーゲームをしている人もそうしたことをうすうす感じているから、株式に過熱感がないのかもしれない。

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