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超過貯蓄に陥っている日米経済

第46回衆議院選挙は自民党が294議席を獲得、圧勝した。投票率が59.32%と戦後最低に落ち込み、政党が乱立し、自民党が漁夫の利を得た。自民党比例区の獲得得票数は1,662万票と前回を下回り、第41回から導入された小選挙区比例代表並立制以降では最低となった。小選挙区でも2,564.3万票と前回より165.8万票少なかった。第44回の郵政民営化選挙で自民党は小選挙区3,251.8万票、比例区2,588.7万票、それぞれ獲得したが、議席数は296と今回よりも2議席多いだけである。今回の選挙は、多党化による票の分散によって、自民党が少ない得票でも多くの議席を獲得できることを証明した。

大政党が有利な小選挙区制と一票の違法な格差が最大限発揮され、得票数と政党議席数の違いがより露になった選挙になった。だが、政治は議席数が物を言う。自民党の安倍総裁は18日、自民党本部で日銀の白川総裁と会談、選挙中に声高に言っていた物価目標2%を日銀に要請した。20日に終了した日銀金融政策決定会合では資産買入規模を101兆円へと10兆円増額、同日、白川総裁は会見で「中長期的な物価安定の目途」を次回会合(来年1月23日、24日)で打ち出すと言う。まず、物価目標を2%することは間違いない。

日銀は政治にどんどん飲み込まれていき、主体性は失われてしまった。公家集団では政治に立ち向かう気概などまるでない。まさに金融政策は安倍総裁の独壇場になっている。自民党は日銀法改正に言及しながら、日銀が国債を直接購入するようにボルテージをあげてくるだろう。

安倍総裁は副総裁兼財務相に麻生元首相を内定、さらに金融担当相も兼務させるようだ。200兆円の公共工事を推進するために、財務省に振り付けをさせ、日銀に金を出させる寸法なのだろう。経済の底上げには公共工事が手っ取り早いからだ。公共工事を積み上げ、無理やり経済を引き上げ、2014年4月の消費税引き上げを実行しようというのである。

日銀の資産買取額拡大で日銀の資産は膨れる。民間金融機関の資産は国債から現金に代わるが、現金を保有しても収益を生まないので国債を買うことになる。日銀の資産買取プロセスは日銀と民間金融機関の国債が拡大するだけで、国に金が向かい政府支出が確保される以外には実体経済に影響しない。

日本経済はそもそも需要減少期に入っているため、国内資金需要も減少しており、民間金融機関から非金融部門へは金は出て行かないのだ。これだけ買いオペを拡大してもすでに1%以下の長期金利は下がらず、金利低下による需要喚起は期待できない。資金需要を生み出したいのであれば、家計や企業向け小売金利を引き下げるしかない。

バブルの主役であった金融機関の収益は青息吐息の非金融機関に比べて底固く推移している。にもかかわらず、納税額(法人税、住民税、事業税)は微々たるものであり、昨年度は全国銀行で5,231億円、都市銀行は2,607億円を納めているに過ぎない。都市銀行は2010年度までの3年間は1,000億円台、01年度から07年度までの7年間では最低38億円から最高でも675億円を納めただけである。バブル崩壊後、巨額損失を発生させたため、これまで都市銀行はほとんど法人税を納めていなかった。公的資金の注入で倒産を回避し、その上税金をほとんど払わなくて済む。なんと良い会計制度なのであろうか。

銀行は社会のインフラであり、社会を支えるものである。これまで面倒を見てもらったのであるから、少しは社会に報いなければならない。住宅ローン等の高い金利を引き下げ、国債利回り程度の低い金利を提供する必要がある。

 安倍総裁が大胆な金融緩和を叫ぼうが叫ぶまいが、家計が貯蓄に励み、それを吸収する投資等が出てこない貯蓄超過の状態では、需要不足を政府が穴埋めする以外に、経済の落ち込みを阻む手立てはない。頭数が減少することで個人消費支出が減少していくことは避けられない。個人消費が減少し、それに伴い民間設備投資も削減されるだろう。消費や設備投資が弱くなれば、経済は急速に悪化する。政府部門の支出増で経済の減速を緩やかすることはできても、所得の減少により、貯蓄水準も低下していき、財政をファイナンスする規模も縮小していくだろう。貯蓄水準の下方シフトにより、国民所得は減少することになる。このような経路に日本経済は入っているのである。

 2008年の金融危機後、米国経済も貯蓄超過に陥っている。08年8月の米商業銀行の預金と貸出はやや貸出が上回っていたが、09年1月以降は恒常的に預金が貸出よりも多くなり、しかも両者の差は開くばかりである。今年11月には貯蓄が貸出を1.92兆ドル上回り、開きは1年前よりも0.45兆ドル多くなった。このように顕著に乖離したのは統計が利用できる1973年1月以降はじめてである。

米商業銀行の超過貯蓄はどこに行っているのかと言えば、FRBに預金されているのだ。FRBはそれを元手に国債等を購入し、政府への財源供給者となっているのである。需要不足を政府部門の需要創出で持ちこたえているが、来年早々、政府支出が大幅に削減されることになれば、財政に頼っているだけに米国経済への打撃は大きく、行き詰まるのは速い。

安部総裁の大言壮語を材料に円安ドル高の流れが続き、円ドル相場は昨年4月以来の84円台乗せである。だが、過去の円ドル相場の基調を日本の政治屋や日銀の言動によって変えることができたかどうかを振返ってみると、ほとんどそのようなことは起こらなかったといってよい。日本の政治屋や日銀の為替相場へ影響力はほとんど認められないのである。動いたとしても一過性ですぐに元に戻る。

今回はたまたま反応したが、賞味期限は短いはずだ。円ドル相場は基本的には、米金融政策と米国債利回りによって決まる。FRBは失業率が6.5%に低下するまでゼロ金利を続けるといっている。

12月12日、FRBは来年第4四半期の失業率を7.4%~7.7%と予想しており、11月の失業率(7.7%)とさほど違わない。来年第4四半期の実質GDPは前年比2.3%~3.0%と今年より1%程度高くなると予測しているが、失業率については慎重である。来年の米経済の足取りはFRBの想定よりも弱いのではないか。実質個人消費支出の伸びは低く、これが3%程度に伸びるとは考えにくいからだ。

米国経済の足取りがはっきりしなければ、FRBはゼロ金利を続けざるを得ず、そうなれば円高の地合いから抜け出すことは難しい。FRBは国債も買い続け、米債券利回りも低位にとどまるはずだし、なにがなんでもFRBはそうするだろう。債券相場が急落することにでもなれば、FRB自身が窮地に追い込まれるからである。 

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