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路線価のバブル期超えと30万人超の人口減

先週はふたつの注目すべき統計の発表があった。ひとつは国税庁の『路線価』、もう一つは『住民基本台帳』による日本の人口。日本の人口減はますます深刻になっているにもかかわらず、東京の最高路線価は1992年の過去最高を25年ぶりに更新した。東京の人口は増加しており、他の都市や地方とは条件が違うというが、説明がつかないあまりの上昇であることは間違いない。超低コスト資金の調達可能により、不動産や株式といった金融経済は拡大しており、実体経済とは掛け離れ、バブル化している。
1980年代のバブル経済を招いたのは日銀に低金利政策であったが、ゼロ金利の上に巨額の国債購入、さらにETF、J-REITの購入を付け足した社会主義的金融政策が今回のバブルの引き金を引いた。歴史は繰り返された。

6月の米非農業部門雇用者が前月比22.2万人増と予想よりも良く、ドルは強含んだ。円ドル相場は113円台へと5月上旬以来約2ヵ月ぶりの円安となった。対ドルでユーロも前週比では安くなったが、ECBの金融正常化に向けた議論が進みそうだとの観測からユーロは円ほど弱くならなかった。ドイツ国債の10年物利回りは過去1ヵ月で30ベイシスポイントと米債利回りの上昇を上回っていることもユーロを支えている。物価面でもユーロ圏が米国の物価上昇率を下回っており、ユーロの価値を高めている。

6月調査の「短観」によれば、全規模全産業の業況判断は12と前回よりも2ポイント上昇した。大企業に限れば20と4ポイント改善し、非製造業は23と製造業よりも6ポイント高い。特に、建設の業況判断は48と大企業ではトップ、不動産も対個人サービスと並び35の2位と好調。中堅企業の業況判断1位、2位は不動産33、建設31であり、今、日本で最も景気が良いのはこれらの業界といってよいだろう。
建設、不動産を好調にしたのは日銀のゼロ金利政策である。10年物国債の利回りは0.1%にも達していない。格付けの高い社債(10年)は0.3%台と2013年に比べれば3分の1ほどであり、資金調達コストは著しく低下した。そこにオリンピックだ、外人観光客の急増だといった要因が加わり、商業ビルの建設ラッシュとなった。明らかに、東京の不動産はバブルである。
国税庁発表の『路線価』(2017年1月1日時点)によると、東京の最高路線価(銀座5丁目)は4,032万円(1平方メートル)とこれまでの最高であった1992年の3,650万円を10.5%も上回り過去最高を更新した。バブル崩壊により1997年には1,136万円へと下落し、その後横ばいで推移していたが、2005年以降勢いを増し、2008年には3,184万円とバブル期以来の高値を付けた。米金融危機や東北大震災の勃発により、2012年には2,152万円まで落ち込んだ。だが、2013年に登場した黒田総裁が、大規模な国債購入をはじめると2017年まで4年連続で値上がりし、しかも上昇率は年を追うごとに拡大、2017年には前年比26.0も上昇する有様、4年前の2013年と比較すると87.4%と異常に値上がりしている。2016年末の日経平均株価を2012年末と比較すると84.3%上昇しており、東京の最高路線価の上昇率とほぼ同じだ。足取りの重い実体経済とあまりにも違う景色であり、とまどうばかりである。
大阪や名古屋の最高路線価も上昇しているが、2017年と2013年の比較では大阪65.2%、名古屋46.6%であり、東京の上昇率が抜きんでている。東京はバブル期を超え過去最高値を更新したが、大阪は過去最高値(1991年)の41.6%、名古屋(1992年)は45.3%とピークの半値以下である。いかに東京の地価が異常に値上がりしているかがわかる。
地方の地価は最高路線価であってももっと伸びは緩やかであり、東京一極型の上昇といってよい。地価は東京をピークに地方に行けばいくほど低迷しており、東京の不動産所有者と地方の不動産所有者との資産格差は拡大の一途をたどっている。
『住民基本台帳』によれば、今年1月1日現在の日本人住民は前年比30.8万人も減少しているけれども、楽観的な需要見通しや歴史的な低資金コストなどから、建設、不動産はいけいけどんどんの様相を呈している。
これで日本人住民は8年連続の前年割れであり、しかも減少数は年々拡大し、減少率も0.24%と最大になった。出生者数の98.1万人に対して死亡者数は130.9万人と自然減が32.8万人に拡大した。出生者数ははじめて100万人の大台を割り込む半面、高齢化に伴い死亡者数は増加しているからだ。老年人口(65歳以上)は3,411万人と年少人口(15歳未満、1,594万人)の2.1倍となった。老年人口の割合は27.17%と10年で6.17ポイント上昇した。老年人口の割合はさらに上昇し、死亡者数は増加し続けるだろう。死亡者数が増加しながら出生者数が減少している状況に変化がなければ、自然減の拡大は避けられない。自然減の増加を緩やかにするには、死亡者数の増加は食い止めることができないので、出生者数の増加を図るしかない。
人口減という深刻な状況に直面しながら、いまだに保育園や保育士の不足が解決されていない。保育園問題を抱えていながら、東京都は私立高校の学費助成事業に着手した。まずは保育園の開設拡大と無償化を実施すべきではないか。でなければ合計特殊出生率の回復は望めず、人口減はより深刻になるだろう。
半月ほどのオリンピックに巨額の金をつぎ込み、後は野となれ山となれか。政治主導の祭りで、ガス抜き狙い。築地市場問題も解決されていないところに、3年後また同じような問題が発生する。オリンピックなどご破算に、築地はそのまま継続利用すればよいではないか。それよりも保育園、それに関わる人的確保の政策を優先すべきである。
育児ができる社会体制の構築が喫緊の課題だ。特に、育児休暇は制度化すべきではないか。出産すれば女性はもとより男性も最低数ヵ月の休暇を義務付ける必要がある。核家族で夫婦だけで面倒をみなければならない家計であれば、第2子、第3子の出産は男性が休暇を取れなければ不可能である。子育てに保育所、育児休暇は必須であり、これらが整えられなければ、日本の人口は予測よりもさらに減少するだろう。日本は65歳以上の人口だけが異様に増え続ける黄昏の国になる。

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