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過去最高値更新の米株式

S&P500とナスダック総合指数は過去最高値を更新した。昨年末からの値上がり率は17.3%、22.8%である。年初、パウエルFRB議長の「市場のメッセージに注意深く敏感に耳を傾け、政策運営に当たり下振れリスクを考慮するということを申し上げたい」との心強い発言が買い手に安心感を与えたことは間違いない。もし市場に異変が生じても、FRBが再び上昇軌道に乗せてくれるとの期待があるからだ。そう信じている市場関係者も問題だが、それにしてもパウエル議長は愚かな発言をしたものだ。彼らは、FRBが市場を操ることができると本当に思っているのだろうか。米名目GDPの2.4倍の50兆ドル(5,580兆円)もの巨大な市場が暴れ出すと手が付けられなくなることは火を見るよりも明らかである。原発がメルトダウンするのと同じようなものだ。人間が手を出して、鎮めることができるような生易しいものではないのだ。それをあたかも操れるように吹聴するとはどういう了見なのだろうか。FRB議長としては失格である。

もしなにかがあれば、FRBが救済してくれる。こうした情報が市場を席捲すれば、情報が渦巻いている市場機能そのものが失われてしまう。さまざまな情報が市場に正しく織り込まれなくなるからだ。つまり価格形成が正常に作動しなくなるのだ。パウエル議長の発言によって、米株式やそれに追随している日本や欧州の株式はすでに競争市場下における適切な株価から逸脱してしまっている。特に、日本の株式は日銀や公的年金の本格的な買いによって競争市場で値付けされる価格から大幅に上方乖離している。

政府と日銀が一体になって、共産主義政治体制で行われるような市場介入が、あたかも正しい行いであるかのように日々堂々と行われているのだ。このようなことがまかり通ること事態、戦前からの、いやもっともっと前の時代から続く「あいまいな日本」が今もなお生き続けていることを感じさせる。

敗戦後のけじめが「あいまい」、「むにゃむにゃ」なままにされたことが、ずっと尾を引き、日本の政治や経済が成熟し大人になれないことと無関係ではないだろう。1990年代以降のバブル崩壊による不良債権処理が「あいまい」なまま放置されていたことも想起しなければならない。今もって金をどぶに捨てるような福島の原発処理や高放射線量地区への帰還政策が行なわれていることは、いい加減で杜撰な日本の体質を象徴している。こうした非道ともいえる政治を推進しているのが安倍首相なのである。

東電はいまだに会社のためならば、国民を犠牲にしてもかまわないと考えている。国の管理下に置かれながら、青森県東通村への寄付、日本原子力発電への巨額支援、さらには福島第1原発への特定技能外国人の受け入れなど、東電の思考は原発の事故後もまったく変わっていない。日本人が不足しているので外国人までも原発の事故現場で働かせる。考え方は奴隷労働と少しも変わらない。

中国や北朝鮮の国家統制を非難するが、日本でもまったく同じことが長期間続けられているのである。日本はふたつの顔を持つ国なのだ。ある場面では資本主義を他の場面では共産主義というふうに使い分けている。

自由民主党と言いながら、自由市場をぶち壊し、民主主義を踏みにじる。まさに言行不一致の政党といえる。第2次安倍政権以降、株価は上昇してきているが、実体経済との関係ではいかにもちぐはぐである。2018年末を2012年末の日経平均株価と比較すると92.5%も上昇しているが、名目GDP(2018年第4四半期・2012年第4四半期比率)は11.5%の伸びにとどまっている。

なぜこうした実体経済と株式に大きな隔たりが生れたかというと政府と日銀があの手この手で株式に介入したからである。金融経済では実体経済と異なり期待を煽るだけで、かなりの効果を発揮する。口先だけでも権力者であればそれ相当の影響を及ぼすことができる。口先だけでなく、日銀だけで年6兆円もの株式を購入していることのインパクトは計り知れない。

米株が過去最高値を更新する一方、日経平均株価は回復したとはいえ、最高値の6割に満たない。米国経済が減速するという前提では、これから先、大幅に上昇することはないだろう。そうであれば出遅れている日本株を買い増しするのも悪くない選択だ、と外人が考えるのはあながち的外れではないだろう。外人は4月第3週まで3週連続の買い越しで(累計1兆3,183億円、東証1部)、日本株を支えている。

ドイツ景況感指数の悪化から対ドルでユーロは売られ、約2年ぶりの安値だ。ドルユーロ相場はドイツの国債利回りにほぼ連動しており、ドイツの景気次第である。4月のIfo製造業景況感指数は4.0と下がり続けており、2012年12月以来6年4ヵ月ぶりの低い水準だ。  

円ドル相場は膠着状態に陥っている。今年第1四半期の米国経済は実質前期比0.8%と前期(0.5%)の伸びを上回ったものの、主力の個人消費支出は0.3%と前期の半分の伸びにとどまった。もっとも貢献度が高かったのは純輸出だ。輸入の減少により、赤字幅が改善したからである。2番目は3期連続で増加した在庫であり、在庫と純輸出とで実質成長率を0.4%引き上げた。成長率は高くなったとはいえ、成長の中身は良くない。

個人消費支出(PCE)の低迷により、PCE物価指数は前年比1.4%と2期連続で低下し、FRBの目標を下回った。エネルギー・食品を除くコア指数の伸びも1.7%と目標以下となり、物価の面からは利上げする必要はなくなった。

日本とドイツの10年債利回りはマイナス、米国は2.5%である。利回りは1930年代の米大恐慌のときでも経験していない異常な水準が続いている。この恩恵を受けているのは金融経済であり、実体経済はそのおこぼれ程度である。実体経済を陰ながら支えるのが金融の役目だが、それが全面に現れ、経済が博打場中心に動くことはいかにも不健全である。トランプ大統領や安倍首相は金融の博打場が活況を呈し、バブルになろうが、そのようなことには歯牙にもかけない。かれらの頭にあるのは選挙のことだけだから。それまでは株式を鼓舞することに注力するだろう。

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