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過去6年の実質消費支出、たったの0.2%(年率)

米株安により日本株も軟調である。米中通商摩擦の不透明感が市場を覆っており、NYダウは5週連続安となった。貿易問題は米国の製造業にも悪影響していることが明らかになってきており、株式には手を出しにくくなってきている。4月の米非軍事資本財受注(航空機除く)は前月比0.9%減少、さらに5月の米PMI(製造業)は50.6、前月比2.0ポイントも低下した。米企業の収益環境は厳しさを増している。米中貿易紛争が続いていけば、期待収益率は低下し、設備投資マインドはさらに悪化、米株式は売られるだろう。米10年債利回りは昨年11月から大幅に低下しており、米国経済の減速やそれに伴う利下げを織り込みつつある。WTIの60ドル割れに伴い、CRB指数は今年1月上旬以来の水準に低下した。

トランプ大統領は株式の動向を注視しながら、対中通商交渉を進めていくはずだ。株式が暴落することなく底堅く推移するならば、強気で臨むけれども、株式が激しく下落する様子をみせれば、強気一辺倒ではいられない。すべては来年の大統領選挙に標準を当てており、株式と貿易交渉との兼ね合いを図りながら勝利の図式を探っているのではないだろうか。

米株の不振によって、日本株も低調である。経済の動きは鈍く、底値はまだ先と考えざるを得ない。5月の日本PMI(製造業)は前月比0.6低下の49.6と景気が良いか悪いかの境を割り込んだ。4月の輸出は前年比2.4%減と5ヵ月連続のマイナスであり、この輸出の低迷が製造業にダメージを与えている。影響を被りやすい対中輸出は-6.3%とマイナス幅が大きい。一般機械に限れば前年比-17.4%、なかでも半導体製造装置は-41.0%も落ち込んだ。半導体製造装置は昨年11月から悪化しているが、4月の減少率がもっとも大きく、底がみえない。金属加工機械の対中輸出も4月、前年比32.0%減と引き続きマイナス幅は大きく、中国の設備投資意欲は冷え込んだままである。

3月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前年比-0.7%と3ヵ月連続の前年割れである。中でも、製造業は7.6%減と昨年11月以降5ヵ月連続のマイナスであり、国内製造業にも米中貿易戦争の影響がはっきりあらわれている。

5月の製造業PMIが悪化したことは、5月の輸出も相変わらず不調だということだ。気まぐれなトランプ大統領のことだから、なにが飛び出すかわからないが、当面、米中の貿易関係が改善するとは予想しにくい。日本の場合、輸出が不振であれば、製造業の業績は悪化するが、この相関関係を覆す要因はどこにも見当たらない。

しかも、円ドル相場が109円台へとやや円高に振れているが、ここにきて、WTIが今年3月以来の50ドル台に低下しているが、原油価格の安定は貿易収支の改善に貢献するだろう。貿易黒字の拡大は円高ドル安に繋がり、製造業の収益を圧迫することになる。

輸出減、WTIの下落、製造業の受注減などはすぐに反転することはなく、製造業の期待収益の改善は見込めそうもない。これらの変化はときには激しくなり、経済の浮沈に影響する。だが、経済全体の半分以上を占める最終消費の変化は小幅である。5月20日、1-3月期のGDPが公表されたが、民間最終消費支出は305.4兆円(季節調整値、年率)、3年前と比べて2.1%(年率0.7%)、6年前の2013年1-3月期比でも3.9%(0.6%)しか伸びていない。実質では3年比1.4%(0.5%)、6年比1.1%(0.2%)とさらに伸びは低くなり、ほぼ停滞していると言ってよいだろう。第2次安倍政権誕生以降、失業率などの雇用は改善されたが、消費については少しも良くなっていないのである。

輸出の増減や機械受注の変動などまったく関係ないように民間最終消費支出の動きはにぶいのである。大きな変化をもたらしたのは2014年4月の消費税率の引き上げくらいだ。引き上げ前の2013年度の実質民間最終消費支出は2.8%伸びたが、消費の先食いで2014年度は2.6%減少している。2015年度以降も0.7%、0.0%、1.1%、そして昨年度の0.4%と低迷は続く。東北大震災後の2012年度でさえ0.7%伸びており、2018年度はこれを0.3ポイント下回っている。因みに、米国の個人消費支出は2.6%(2018年)と日本の6倍超である。

なぜこれほど日本の消費は弱いのだろうか。所得の伸び悩みを始め、人口減と少子高齢化さらに所得格差、将来への不安などが消費行動にブレーキを掛けているのではないか。教育にカネが掛かり、老後への備えも必要だと貯蓄に励む。

『家計調査報告(家計収支篇)』によれば、2018年の平均消費性向(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)は71.2%と前年よりも0.9ポイント低下し、これで4年連続の低下である。世帯主が40歳未満の平均消費性向は64.4%と平均を大幅に下回り、積極的に貯蓄している姿勢が窺える。

平均消費性向の低下は、消費支出の伸びが可処分所得の伸びを下回っているから起こる。2018年と2012年を比較すると可処分所得の3.0%(年率0.5%)に対して消費支出は6年でたったの0.5%しか増えていない。増えない可処分所得を遣り繰りしている苦しい家計の姿が浮かび上がってくる。

少子高齢化も消費支出にマイナスに作用している。2018年12月1日の総人口を2012年と比較すると、65歳以上は481万人増加していが、他方、15歳未満と15歳以上64歳までは116万人、473万人それぞれ減少している。65歳以上の急増は、高齢夫婦無職世帯や高齢単身無職世帯が増加していることでもある。

高齢夫婦無職世帯と高齢単身無職世帯の可処分所得は193,743円、110,933円と勤労者世帯(455,125円)を大幅に下回る。可処分所得が少なければ消費支出もそれに沿ったものにならざるを得ない。可処分所得の少ない高齢世帯の増加が、消費支出の低迷に拍車を掛けるのではないだろうか。

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