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金融のバブル化を助長するECBの国債購入策

ユーロ圏経済の停滞それに伴う消費者物価の前年割れを危惧し、22日、ECBは国債購入を3月から開始することを決めた。月額600億ユーロで来年9月まで合計約1兆ユーロの国債を買い入れる。ECBの買い入れ決定によって、欧州の国債相場は上昇し、ドイツ国債利回りは週末、0.36%と過去最低を更新した。イタリヤやスペインの国債も1.52%、1.37%と1ヵ月前と比べると30ベイシスポイントほど低下した。米国債利回りも2013年末をピークに低下しつつあり、日本は先週、0.2%まで下がり過去最低を更新するなど、主要国の国債利回りは歴史上経験したことのない領域に入っている。

国債購入を継続している日本や昨年10月に終了した米国の事例をみれば、国債購入が実体経済へ貢献したという確たる証拠は認められない。むしろ金融・株式市場への顕著な効果が際立ち、世界経済を歪めてしまったことが挙げられる。実体経済はもたついているが、株式・国債相場が急騰し、実体経済と金融経済が乖離してしまい、明らかにバブルしたという深刻な疾患をもたらした。

すでに過去にないゼロ金利の長期実施にもかかわらず、民間部門の資金需要は回復せず、余剰資金は中央銀行に預けられたままだ。1月20日時点の日銀総資産は302兆円、負債の当座預金は178.5兆円だ。それらを元手に、日銀は252.6兆円の国債を購入。当座預金は金融機関が日銀に預けた金、さらに突き詰めれば国民が金融機関に預けた金なのである。銀行預金(3業態)は昨年12月、621兆円あるが、その3割近い金が金融機関を経由して日銀に預けられているのである。

1月21日時点のFRBの総資産4.51兆ドル、負債の預金は2.88兆ドルである。これらを元手に、証券等を4.43兆ドル保有している。その内訳は財務省証券2.46兆ドル、モーゲージ担保証券1.75兆ドルと1年前に比べるといずれも増加している。FRBは昨年10月、証券購入を終了したが、総資産は依然過去最高水準にあり、なかなか減少しない。

米商業銀行の昨年12月の預金額は10.43兆ドルだが、貸出は7.91兆ドルであり貸出・預金比率は75.8%と依然低水準だ。現金は2.82兆ドルと総資産の18.8%を占めており、異例の高比率である。ゼロ金利下でも実際の資金需要の弱い状態が米国でも続いているといえる。

日米ともにこのような異常な国債買いを導入しても実体経済にさしたる影響を及ぼしていないことがあきらかだが、こうした事例をろくに検証もしないで、ECBは国債買いに踏み出すことになった。消費需要が弱く、それに伴い設備投資意欲も低調であれば、ECBが金融機関に金を供給しても、資金需要は出てこない。期待収益率は金利よりもさらに低下しており、金利や金融機関への資金供給では実体経済を動かすことはできない。金融政策任せで、民間部門の活性化に経済を委ねているだけでは主要国の需要不足はいつまでも解消しないだろう。いまの需要不足に対応できるのは公的部門だけである。

国債利回りが過去最低を更新し、実体経済の成長率よりも低い水準に低下してもなお設備投資が弱い。消費者物価は安定しているが、購買意欲は高まらない。物価がマイナスになっても需要は盛り上がらない。新古典派のプライスメカニズムはまったく機能しないのである。市場に任せておけば、均衡が達成されるとのたまうが、均衡は一向にもたらされない。市場に委ねれば、ますます不均衡が拡大し、経済は歪になり、挙句の果ては破綻に追い込まれる。

日本のように人口減と超高齢化が進行していれば、経済規模が縮小することは不可避だが、人口が増加している国では成長していくだろうし、そのような政策を講じる必要がある。欧州のように、財政規律を厳しくすれば、実体経済の成長は足踏みすることになる。

ユーロ圏にはドイツのような豊かな国からそうでない国まで含まれているので、ユーロ圏が纏まるには、豊かな国からの財政支援が不可欠である。富の分配がユーロ圏で行われなければ、統合の意味はないのである。富や所得の分配が適切に行われることによってのみ、欧州のまとまりがより強固になるのだと思う。長い歴史を振り返ってみれば、豊かな状態をいつまでも持続させることなどできないことがわかるはずだ。さまざまな条件が重なり合いたまたまうまくいっただけなのである。

 金融政策に過度に依存することは、金融コスト低下の恩恵を受ける金融部門が太るだけだ。実体経済に比べて金融部門の肥大化が進行し、その行き着く先はバブルということになる。金融部門の破裂が実体経済をも破局に引き込むことになるのである。そのようにならないためにも財政政策が必要なのだ。自分たちが優れているから豊かになれたのだといった自惚れは禁物である。そのような狭い了見が跋扈しているようでは、欧州の前途は多難だと言わざるを得ない。

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