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金融緩和という念仏の剥げるとき

日本の株式市場は動揺しいている。22日のピークから6営業日後、日経平均株価は13%も下落した。週末には戻したものの、4月末を下回って引け、月間の連続上昇は9ヵ月でストップした。それでも5月末の前年比上昇率は61%と過去30年にない記録的な伸びであり、急落したとはいえ、バブルがすべて吐き出されたわけではなく、依然不安定な状態にある。

5月第4週までに外人は日本株をほぼ毎週買い越しており、第4週までの買い越し額は1.59兆円に達している。4月は3兆を超える空前の規模の買い越しを記録しており、今後、4月の平均買いコスト13,400円を下回ってくると、膨大な外人売りが出てくることは間違いない。

これまで売り越していた個人が5月第4週に4千億円近く買い越し、投資信託も買い意欲が強まるなど後発組があらわれてきていることも相場の終焉を示唆している。いつも高値掴みをするのが個人と投資信託であり、最高潮に達したあたりに買いに転じて、売り機会を逃してしまうのである。

相場は外人の動き如何であり、その外人が最も気にかけているのが米国の金融政策であり、それがいつ変更されるかが最大のポイントになっている。これまで世界の株式が好調であったのは、主要な中央銀行が超金融緩和策を採ってきたからである。米国経済は拡大しているとはいえ、1-3月期のGDPは実質前年比1.8%と昨年を下回っており、決して満足のできる成長ではない。ユーロ圏はマイナス成長が継続しており、不況下の株高だ。日本経済は公的部門が支えている状態であり、民需は弱い。つまり、株式がこのように上昇するほど実体経済はいずれも良くないのである。なぜ株式が選好されているかといえば、主要中央銀行が盲目的に超緩和策に突き進んでいるからなのだ。

超金融緩和の中身などどうでもよいのだ。ただ、超金融緩和という言葉を発するだけで株式が買われ上昇する、このようなことが繰り返し行われ、米国では過去最高値を更新し、日本では1万5千円台まで回復したのである。念仏を唱えれば救済されると信じているのと同じことなのだ。金融緩和を唱えることによってのみ株式は買われてきたのである。超金融緩和の中身はまったく問わないのである。金融緩和は市中に金がたくさん溢れることと信じ込む。株式が上がるか下がるかは、念仏のように金融緩和の威力を信じるか信じないかだけなのだ。

だが、日本株のように高騰すれば、いつまでも上昇するとはだれも思わなくなるため、超金融緩和への疑念や超金融緩和の変更観測が生じると、市場は動揺することになる。超金融緩和を徐々にでも縮小していくことは、信用を絞ることになり、株式上昇の前提が崩れることになる。

株式相場が崩れるのが怖いのか、FRBや日銀を批判する経済学者はほとんどいない。原子力村と同じで、経済学会に自己浄化作用はほとんど働かない。原発は安全だから稼動させるという論理が中央銀行にも当てはまる。超金融緩和を推し進めれば、物価も上がり、デフレ経済から脱却できると。こうした貨幣数量説が成立する経済は完全雇用を前提にしており、いまの現実の経済とは掛け離れたものだ。理論的に間違っていることを生きている経済に導入されてはたまったものではない。このような出鱈目な考えが正面きって批判されず、日本経済は間違った方向へどんどん進んでしまい、引き返すこともできない状態に陥りつつある。

FRBが金融機関の不良債権を買い取り、援助していることが、米国経済の問題解決の先延ばしとなっている。膿をなかなか取り除くことができないことが、正常な成長経路に戻らない最大の要因なのだ。FRBの総資産は3.3兆ドルを超えるが、このなかにはごみが詰まっている。米国は市場経済を標榜するけれども、実際にしていることは非市場行為であり、言っていることとやっていることはまったく正反対だ。これが米国なのである。

 29日時点のFRBの総資産は3.38兆ドルだ。モーゲージ担保証券だけで1.16兆ドルも溜め込んでいる。財務省証券は1.88兆ドルと最大の資産だが、前年比増加額ではモーゲージ担保証券が0.31兆ドル増とトップである。いまだにモーゲージ担保証券を買わざるを得ないことはモーゲージ担保証券市場が正常に機能していないからだ。FRBが巨額のモーゲージ担保証券を買い支えているので、住宅市場も少しは良くなっている。だが、こうした姿勢をFRBが変えることになれば、すぐさまモーゲージ担保証券市場はおかしくなり、行き詰ることになるだろう。FRBの購入資金の出所は金融機関の預金であり、FRBの口座に2.08兆ドルある。最も低コストでモーゲージ担保証券の面倒をみることができるのは、FRBを措いてほかにないのである。

 米商業銀行の資産構成は歪のままである。不動産貸付はピークより減ったとはいえ、高水準に張り付いており、貸付等に占める不動産向け比率は4月、48.6%と高く、異常な状態のままである。貸付よりも預金の伸びが高いため、総資産に占める貸付の比率は54.5%と1973年以降では最低である。貸付比率が極めて低いため、現金で1.96兆円も保有している。これがFRBの当座預金に入っているのである。総資産に占める現金の比率は4月、14.7%と1973年以降の最高を2ヵ月連続で更新した。08年8月の2.8%から急上昇し、いまだに現金比率が最高を更新していることは、米金融システムは異常事態から抜け出ていないことを物語っている。

 4月の米個人消費支出は前月比-0.2%と昨年5月以来のマイナスとなった。財は-0.6%と2ヵ月連続のマイナスと冴えず、サービスは0.1%の低い伸びにとどまっている。5月の消費者センチメント指数は約6年ぶりの高い水準に上昇したが、実際の消費支出は弱い。消費支出が低迷しているのは可処分所得が-0.1%と3ヵ月ぶりのマイナスとなったからだ。所得の伸びが低いことに税金増が加わり可処分所得を悪化させている。消費支出の低迷によって、個人消費支出物価指数(PCE、食品・エネルギーを除く)は前年比1.1%と昨年11月以降下がり続けている。

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