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非常時には非常時の政策を打ち出せ

円ドル相場は週末、84円台に下落し、昨年12月中旬以来3ヵ月半ぶりの円安ドル高となった。前週比2円70銭も安くなり、17日終値に比べれば5円以上の円安ドル高となり、日本売りが進行しつつある状況下にある。震災直後の急激な円高ドル安はあきらかにミスプライシングであり、放置しておいても、早晩、逆の動きが強まっていたであろう。

為替市場の関心は日本の行方であるが、あまりの被害の大きさと原発の拙劣な処置が、日本の基本的国力の不信につながり、円売りが強まっているように思う。実体経済も激しく悪化しており、あらゆる面から円を保有する気持ちは失せてきている。多数の事業基盤が喪失してしまったことから、基本的製品の供給が止まってしまい、生産の目途がたたなくなっている。震災絡みの債権の多くが回収できなくなり、金融機関も貸出にしり込みし

 

ていると考えられ、今後、倒産が多発するだろう。

 

なによりも消費者マインドが萎縮し、消費が一気に落ち込んだことが、景気を腰折れさせるだろう。人々の気持ちを暗くしているのは、地震もさることながら原発問題の重苦しい不気味な不安だろう。4機もの原子炉がメルトダウンを起こすという世界でもこれまでにない大事故が日本人の心に深く染み込み、憂鬱な気持ちにさせている。こうした気持ちが消費行動にあらわれており、耐久財や奢侈品の売れ行きがぱたっと止まってしまった。3月の新車販売台数は前年比37.0%も減少し、東京の主要百貨店売上高も前年を2割以上下回る不振となった。消費水準は下方にシフトしてしまい、当分の間、元に戻ることはないだろう。長期的な消費の不信は、設備稼働率の低下となり、遊休設備の増加、設備投資の削減につながり、景気はさらに悪化の道に踏み込むことになる。

実体経済の悪化は円安ドル高を加速させるだろう。輸出は追い風をうけるが、生産の回復の遅れから。それほど伸びないかもしれない。原油等の輸入価格の上昇により、卸売物価は顕著に上昇し、企業収益を圧迫することになる。その影響は消費者物価にも波及し、景気後退下の物価上昇という事態も予想される。消費者物価が上昇することになれば、国債も売られ、債券利回りは上昇するだろう。国債を大量に保有している金融機関は損失を回避するために、国債売りに走り、利回りは大幅に上昇することになる。

折しも、米国の消費支出は拡大し、雇用の改善している指標が発表されたことも、円売りドル買いに拍車を掛けた。3月の米非農業部門雇用者数は前月比21.6万人増と6ヵ月連続のプラスとなり、増加数は昨年5月以来の高い伸びとなった。失業率は8.8%と前月比0.1ポイント低下し、これで4ヵ月連続して前月を下回った。ただ、3月のISM製造業景況指数は61.2と前月から0.2ポイント低下し、頭打ちの感じである。さらに3月の消費者信頼感指数は63.4と前月よりも8.6ポイントも急低下した。住宅価格は1月も前月比0.2%低下し、昨年6月をピークに7ヵ月連続の値下がりとなり、住宅バブル破裂の影響は依然続いている。NYダウは月末値では4ヵ月連続の上昇となり、08年5月以来の高水準である。ナスダックは2月末をやや下回ったが、07年10月末の高値近辺にあり、NYダウよりナスダックの戻りが速く割高だといえる。

 

 

今、円安ドル高に振れることは、またひとつの国難を抱えることになる。どのように考えても、日本の置かれている立場では、円安ドル高なのだ。協調介入など遇の骨頂であり、政府の原発の対応と五十歩百歩である。状況を丹念に分析する能力を持ち合わせていないことを世界に発信しているといってもよい。日本政府にまかせておけばとんでもないことに成りかねないので世界中から原子力関係の専門家がやってきているのである。

 

政府は復興財源のひとつに増税を示唆しているが、増税に踏み切れば、消費者の財布の紐は一層きつく締められ、景気は釣瓶落としとなるだろう。ただでさえ落ち込んでいる消費減に追い討ちをかけることになり、増税が増税にならなくなる。少ない所得のなかから貯蓄の比率を引き上げ、家計はより防衛的になるはずだ。非常事態のときに増税を持ち出し、景気を下振れさせるのはあまりにも作為的である。こうしたときにこそ国債は活きてくるのであり、いままでの安易な国債発行とは次元が違う。

復旧させるには金が必要であり、そのためには国債発行に躊躇すべきではない。追加的な需要を創り出すことができるのは、国を置いて他に無いからだ。日銀は国債の引き受けを拒否するだろうが、すでに株式や投資信託を市場から購入するなど、国債の直接引き受け以上の野放図な行動を採っており、いまさら国債引受がだめだといっても、ときすでに遅しである。