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3兆ドルを突破したFRBの資産

日米首脳会談の成果を安部首相は誇っているが、米国の報道機関の関心は極めて薄いものであった。安倍首相は「緊密な日米同盟が完全に復活をした」と力説したが、米国からすれば、日米関係はいままでと何も変わっていないと判断しているのだ。ことさら、成果を強調し、国内の支持を高めるパフォーマンスにすぎない。経済・金融政策を派手に演出し、株高、円安が進行したことに味を占め、それと同じ手法を用いて日米首脳会談の結果を報道させているのだ。日本の報道機関の報道をみているだけではなにもわからない。

TPPは、米国との2国間協議で詰めなければならない懸案事項が多くあり、協議は難航するだろう。車などさらに関税を引き下げても日本のメリットはたかが知れている。むしろ、輸入によるデメリットのほうがはるかに大きいのではないか。TPPに日本を参加させることは、米国にとって得るものがなければならず、そうでなければ日本を参加させることに意義はないのである。

日米首脳共同声明はTPP以外にはなにも言及していない。米国は日本をTPPに引き入れることで、貿易赤字を減らし、経済を強くしようと目論んでいるのだ。為替はまったく取り上げられていないが、このまま円安ドル高が進めば、米国はかならず介入してくるはずだ。

円ドル相場は93円台で様子見となっている。20日公表のFOMC議事録(1月29、30日開催分)で債券買取額縮小の発言が出たけれども、円ドル相場はほとんど動かなかった。ドルユーロ相場はドル高に振れたが、円ドルの変化はなく、このところの急激なドル高によって、米金融緩和解除観測も効果はなかった。

足元の米金融政策は買いオペを継続しており、2月20日のFRBのバランスシートは3.09兆ドルと過去最高を更新した。資産の大半は買い切り債券であり、2.84兆ドル保有している。08年8月の金融危機が深刻になる前のFRB総資産は約9千億ドルであるから、その3倍以上の規模に拡大しているのである。これほどFRBの資産が膨張すると、FOMCのなかにもこれを不安視する委員が出てきても不思議ではない。いつまでもFRBが、だれもほしがらない政府機関債を買い続けることは、米国の金融の膿をFRBが抱え込むことになるからだ。

このような異常な金融政策を続行しているため、日銀の金融政策や為替相場について、米国は黙っているしかないのだ。ただ、FRBが資産を膨らましても、根本的な解決にはならず、ボディーブローのようにじわじわ米国経済を痛めつけるにすぎない。日本経済を痛めつけた不良債権問題のように、米国も問題を引き伸ばしているのである。米国経済が健全な姿に戻るのはいつのことやら。

FRBの保有債券は、国債の1.73兆ドルとモーゲージ担保証券の1.03兆ドルである。過去1年間では国債が798億ドル、モーゲージが1,796億ドルそれぞれ増加しており、モーゲージの買取が増加していることがわかる。FRBがモーゲージ担保証券を始めて買い取ったのは2009年1月である。初回の買取額は15億ドル、その3ヵ月後には残高は2,872億ドルに拡大し、1年後の規模は9,190億ドルに膨らんだ。FRBはさらに買い進み2010年6月の残高は11.28兆ドルに達した。これをピークに2011年12月まで1年半ほど減少していたが、その後、8,000億ドル台でほぼ横ばい状態であった。しかし、昨年9月のFOMCで月40億ドルのモーゲージ担保証券の買い取りを決めたことから昨年10月以降は再び増加に転じ、先週、2年2ヵ月ぶりに1兆ドルを突破した。

 昨年10月以降、FRBがモーゲージ担保証券の購入額を増額していることは、米国の不動産市場は依然不安定な状況下にあるからである。FRBはモーゲージ担保証券を必死に買い続け、モーゲージ金利を引き下げ、不動産市況の梃入れを図っている。モーゲージ金利(30年物、固定)は1月、3.41%と1970年代以降では最低である。30年国債(3.17%)と比較しても、モーゲージ金利は、日本の住宅ローン金利と国債のようには開いていない。FRBのモーゲージ担保証券買取の効果は十分にあらわれているといえる。

モーゲージ金利の低下は米住宅市場を回復に導いているが、なお住宅着工件数の水準は低く、低金利による需要刺激も十分ではない。住宅着工件数は1月、前年比23.6%増の89万戸と高い伸びだが、モーゲージ金利のこれ以上の低下は望めそうになく、金利からの市場拡大は容易ではない。

住宅価格も昨年1月を底に回復しているが、歩みは緩く、頼りない。FRBが1兆ドルを超えるモーゲージ担保証券を買い取ってもこの程度の回復しかしないことは、FRBがモーゲージから手を引けばどのような事態になるか明らかだ。まだまだモーゲージ市場はとても独り立ちできるような状態ではないのである。

米商業銀行の不動産貸付額は一時減少していたが、この1年はほぼ横ばいである。1月の不動産貸付額は総貸付額の49.1%を占めており、ピーク時よりも低下したとはいえ依然高く、不動産貸付関連の不良債権の清算がまだ中途半端であることを示唆している。総資産に占める貸出の比率は55.2%と歴史的に低い半面、現金比率は13.1%と高く、商業銀行の資産構成は歪んでいる。

商業銀行は貸出が伸びないので、1.7兆ドルもの現金をFRBに預けており、これがFRBの債券購入資金となっているのである。商業銀行とFRBの協同により、米債券・モーゲージ市場は平穏が保たれているのだ。

1月の米消費者物価は前年比1.6%上昇した。FFレートはゼロなので、実質ではマイナス1.6%になる。実質FFレートのマイナスは1月までで3年2ヵ月と1954年以降では最長のマイナス期間だ。まさに実体経済からは逸脱した金融政策が長期にわたり採られている。だから米株式が過去最高値に接近し、世界経済が振るわないのに商品市況が高水準からなかなか下落しないのである。異常な米金融緩和が本来下がるはずの資源価格を高止まりさせ、世界経済の回復を阻害しているのである。 

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