Share |

100円/ドルの節目を突破した円安

5月9日、円ドル相場は節目の1ドル=100円を突破し、約4年ぶり円安ドル高となった。10日はさらにこの傾向が強まり101円台に進行した。毎週公表される米失業保険申請件数が減少を続け、米国経済の改善が予想されることなどでドル買い円売りが加速している。円安ドル高は日本の株高をもたらすと市場参加者が予想していることから、日経平均株価の先週の値上り幅は900円を超え、昨年末からの値上り率は40.5%に達した。日本株はまさに暴騰といえる局面にある。

円安と株高がいまは連動しているが、円安・株高のパターンがいつも起こるわけではない。円安にもかかわらず株安となることもあり得るのだ。いまはたまたま円安・株高となっているだけで、いつその関係が切れるかわからない。円安ドル高が110円、120円と進行するとおそらく円安をよろこび日本株を買うことにためらうはずだ。

円安で日本経済が良くなるのであれば、株式も評価されてしかるべきだが、4ヵ月少々で4割も上がるのは行き過ぎであることは間違いない。いつものことだが熱狂し、わけがわからないうちに暴騰してしまい、その反動に見舞われることになる、今回もそうした道筋を辿るだろう。株価と実体経済との乖離が大きくなればなるほど、反動減も大きくなることは90年代以降を一瞥するだけで明らかである。

急激な円安が本当に日本経済を良くするのだろうか。2011年から日本は輸入が輸出を上回る貿易赤字国となった。2011年は2.5兆円、2012年は6.9兆円のそれぞれ赤字を計上し、赤字は拡大しつつある。しかも、2012年下半期の通貨別比率をみると、輸出ではドル建てが51.5%と半分程度だが、輸入は72.5%がドル建てであり、円安ドル高の影響は輸入により大きく出る。輸入額は円安でより大きくなり、貿易赤字は拡大することになる。

 輸入品目のうちで最大のものは原油等の鉱物性燃料だが、こうした原材料の値上りが、最終需要の減少を引き起こすだろう。値段が上がれば消費者はいままでのように商品を買わなくなるはずだ。需要が減少すれば、価格を下げざるをえなくなる。供給側の競争は激しくなり、価格競争に脱落する企業もでてくるだろう。そのようになれば、最終需要そのものがさらに少なくなり、設備投資どころではなくなり、経済は軋みだす。

 今の円安ドル高をみていると、こうしたシナリオが現実味を帯びてくるのではないだろうかと思う。さらに、来年4月に消費税が3%上がる。2015年10月にはさらに2%上がりいまの倍になる。当面、駆け込み需要が旺盛になり、一見、日本経済は良くなるようにみえるが、駆け込み需要による落ち込みが現われる引き上げ後は、経済は急降下することになるだろう。

 消費税引き上げが物価を上昇させるが、それに伴い円は安くなる。消費税を導入した1989年4月のケースでは円安ドル高は翌年4月まで続いた。3%から5%に引き上げた1997年4月のときは翌年7月まで円安ドル高が進行した。だが、消費者物価の前年比上昇率がピークアウトするとともに、円安ドル高から円高ドル安に転じた。

 消費税の導入や引き上げ後、円安ドル高が1年以上続くという過去の動向から判断すると、今回の円安ドル高は今後2年ほど続くことになる。日銀の無責任な金融政策で相当前倒しで進んでいるとはいえ、消費者物価がこれから上昇することを考慮すれば、円安ドル高の流れは持続するだろう。

 円安ドル高が日本経済を良くするのではなく、悪くすることも考えられる。経済の悪化が円安ドル高を一層進めることにもなる。日銀の根拠のない買いオペは、日本経済を混乱させるだけで、実体経済の中身の充実にはまったく寄与しない。金融経済の肥大化、バブル化、挙句の果ては、1990年代の二の舞を踏むことに成りかねない。今は円安ドル高が経済の改善期待によって株高を演出しているが、その先には、金融経済の破綻による円安ドル高を覗くことができる。異常な株高はそれ自体矛盾を孕み、経済が瓦解していく原因となっていくのである。

関連資料サイズ
130513).doc39 KB