Share |

2,000万人を突破した非正規雇用

昨年12月のドル実効為替相場は2009年3月以来のドル高を示している。円にたいしては2007年央、ユーロでは2005年末以来の水準に上昇した。米国経済が日欧経済に比べればましなからだ。昨年7-9月期の実質GDPは米国の前年比2.7%に対して、ユーロ圏は0.8%にとどまり、日本はマイナス1.3%であった。12月のユーロ圏の消費者物価は前年比-0.3%と2009年10月以来のマイナスになった。日本の消費者物価も前年比伸び率は低下しつつあり、日銀の目標とは逆の動きだ。米国にしても11月の消費者物価は前年比1.3%と極めて落ち着いている。

世界経済の成長率低下による需要減退が経済の体温を低下させているのだ。さらに、ドル高が進行しているため、ドル表示の資源価格等は割高となり、日欧では節約せざるを得なくなっている。需要の減退とドル高という2重の要素が資源価格の急落を引き起こしているといえる。

特に、先週末、原油価格はバレル50ドルを下回り、2013年末比50.9%も落ち込んだ。CRBも同20%ほどの急落となり、資源価格の下落がさらに消費者物価を押し下げることになる。ユーロ圏のように物価がマイナスになれば、ものの価値は下がる一方、貨幣の価値は上がるのでものより貨幣を持とうとする。すると、ものは以前より売れなくなり、需要不足は深刻になり、物価はますます下がることになる。

資本主義経済は所得が増加していくにしたがって、所得のうち消費につかう割合が低下していくというケインズの指摘から逃れることはできない。所得で消費に使われない残りは貯蓄となるが、この貯蓄比率が上昇していけば、この貯蓄を設備投資や国が使わなければ、需要不足は拡大することになり、経済は不況になる。

欧州は需要不足に直面しているにもかかわらず、財政規律を優先させ、需要不足でマイナス成長に陥っている国でさえも、財政の積極的拡大を図ることができない。ギリシャのような足枷をはめられていれば、疲弊した経済の回復はいつまで経っても望めないことになる。一層、ユーロから離脱したほうがよいという主張がつよくなる。

ユーロ圏の盟主であり、経済が比較的良好といわれているドイツでさえ、12月の消費者物価は前年比0.1%とかろうじてプラスを維持している。上昇率は2011年11月の2.4%をピークに低下し続けており、マイナスのデフレになるのは避けられない情勢である。11月の鉱工業生産は前月比横ばい、前年では-0.6%と3ヵ月ぶりのマイナス、資本財受注は前月比-2.8%、前年比0.9%と製造業も低調である。

主要国の国債利回りは過去最低を更新しているが、先週、ドイツの国債利回りも0.4%台まで低下し、過去最低を更新した。消費者物価は前年比ゼロ近くまで低下したが、7-9月期の名目GDPは前年比3.0%伸び、実質でも1.2%増である。名目GDPが3%も伸びているにもかかわらず国債利回りはそれをはるかに下回る0.4%台だ。ドイツの国債価格はあまりにも実体経済から掛け離れている。

政策金利が各国の経済事情に応じて決められるのではなく、ECBが一律に決めることへの矛盾が、国債利回りに現われているのである。ドイツの0.4%台から10%近いギリシャまで利回り格差は大きすぎる。経済が疲弊しているギリシャが回復するためには、低利の長期資金が必要だけれども、このような高金利ではとても長期の設備投資などできない。一方、ドイツは超低利回りで金融の規律が失われ、実体経済が金融経済に翻弄されることにもなりかねない。

日米欧がゼロ金利政策を導入してからひさしいが、それで経済が良くなったとはいえない。むしろ、労働者の地位が弱くなり、さらに立場の弱い労働者が作り出されている。パートタイム雇用比率が上昇し、低賃金労働者層が欧州や日本でも顕著に拡大を続けている。米国のパートタイム雇用比率は過去10年間変化していないが、日本やドイツでは上昇し、米国よりも10ポイント程度高くなっている。

雇用形態の悪化が企業利益を生み出す元になっているが、これが消費意欲を後退させ、需要不足を引き起こす原因にもなっている。低賃金でありながら、将来への不安から、わずかでも貯蓄する。購買力のある所得層が縮小してきているのだ。所得格差の拡大による消費の低迷は、金融政策ではどうすることもできないのである。だから、これほど長期間ゼロ金利を続けても、経済は一向に良くならないのだ。

 特に、日本の雇用形態は非正規に著しくシフトしており、昨年11月には2,000万人を超え、非正規比率は38.0%に上昇した。これだけ非正規が増加することは、低所得者層の増加でもある。2013年度の労働分配率は68.6%と2年連続で低下した。1995年度以降の最高に比べると5.3ポイントも低下している。半面、企業の分け前は25.1%と1995年度以降の最低から7.8ポイントもの上昇だ。

政府は成長戦略などありもしない話をでっち上げて、経済の一番大事な問題を国民の目から逸らしている。すでに成長などしていない日本経済にまだ成長ができるのだと現実離れしたことをいう。問題なのは作り出したものをいかに分配するかだ。これには、非正規労働をなくし、累進課税を強化することで相当是正できるだろう。株式や為替取引にも課税する必要がある。株式や為替などの売買は単なる移転にすぎず、何も生み出してはいないからだ。過度な売買は社会的コスト・リスクを増やすだけである。企業減税などを進める政府と反対のことをすれば、日本経済はうまくいくだろう。

関連資料サイズ
150112).pdf389.4 KB