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6.4兆ドルのモーゲージ資産を保有する米政府機関

FRBが金融緩和縮小を決定したことにより、米株価は上昇、NYダウは過去最高値を更新した。米株高と円安が日本株の買いを誘い、日経平均株価は年初来高値を更新、07年12月以来約6年ぶりの高水準に戻った。来年1月からFRBは債券買い入れ額を月850億ドルから750億ドルへと100億ドル減額する。発表当日、NYダウは300ドル弱も値上りし、FRBの今回の措置を歓迎した。もっとも影響を受けるはずの債券相場は下落したものの、週末にはやや戻し、株式のようには変動しなかった。金融緩和の縮小決定は円ドル相場を102円台から104円台へと大きく変えた。米株高がドル価値を引き上げ、高くなったドルで日本株を買う動きが活発になっている。

日本株を買うにはドル売り円買いが発生し、円高要因になるのだが、今回の外人の日本株買いでは円安が進行している。過去の外人の日本株売買動向と為替相場の関係をみても外人の日本株買いによって為替相場を説明することは難しい。今年の4月は約3兆円の買い越し額を記録しているが、円安が進行しており、1日当たり5.3兆ドルも取引されている巨大な為替市場では、この程度の外人買いでは相場に影響を与えることはできないのである。

 来年4月からの消費税引き上げにより、日本の物価は大幅に上昇する半面、米消費者物価は11月、前年比1.2%と落ち着いており、来年4月以降は日本が米国の物価上昇率を上回ることになる。足元でさえ10月の日本の消費者物価上昇率は前年比1.1%であり、米国とほぼおなじである。それが間違いなく逆転することになるので先行き円安ドル高が続くことになるだろう。

だが、金融緩和に依存した米株式は、今回の縮小では、一段の株高をもたらしたが、これからのおそらく連続的に実施される緩和縮小の過程で、株式・債券等の相場がどのような影響をうけるかが、為替相場を占ううえでのポイントになる。米株式が実体経済に基づいて上昇しているのであれば問題はないが、企業収益の伸びは低くとうてい今の株価を実体経済で説明することはできない。収益で説明できなければ、バブルが発生していることなのである。

7-9月期の米GDP確報値のわずかな上方修正(実質前期比0.1ポイント)でさえも株式に好材料になったが、実体経済を真摯に捉えたうえでの反応ではないと思う。公表されたGDPは米国経済の着実な歩みをあらわしているものではなく、不安を抱かせる内容であった。実質GDPは前期比1.0%伸びたが、その4割は在庫増によるものであった。個人消費支出の寄与度は在庫よりも小さいのである。しかも耐久消費財の寄与が大きく、サービスは弱い状態が続いており、米国経済が今よりも高い成長軌道に回復する兆しは見えてこない。

7-9月期の名目GDPの前年比増加率3.4%よりも低い10年債利回りが、耐久消費財の需要を盛り上げているのである。利回りの歴史的低水準が住宅需要を拡大し、名目では住宅は前年比20.0%も伸びた。11月の米住宅着工件数は109万戸(年率)、前年比では29.6%も拡大し、住宅の回復は著しい。

住宅価格も2012年2月を底として上昇を続け、9月は前年を13.3%上回り、2006年2月以来7年7ヵ月ぶりの高い伸びとなった。イギリスの住宅価格も持ち直しており、11月は前年比8.5%の上昇だった。

こうした住宅市場のバブルともいえる回復が米国経済を支えているが、今後の緩和縮小によるモーゲージ金利や貸出金利の上昇が住宅を筆頭に、自動車・家具などの耐久消費財の需要を冷やすことになるだろう。

FRBのゼロ金利と巨額の債券買いは米国経済の金融依存体質を強めただけであり、製造業のもの作りやサービス業の質的改善などには繋がっていないように思う。2008年に起きた金融危機の根本的問題である金融経済の肥大化がまったく改善されることなく、米国経済はいまだに金融経済にどっぷり浸かった状態にある。

ゼロ金利に引き下げた時点で金融の役割は終わっていながら、債券購入を続けることがなにか経済をよくするという考えに洗脳され、それに頼ってきたというのが、米国経済の真相ではないか。

低成長経済下では資金需要は弱く、銀行は資金を持て余しているのだ。余剰資金はFRBに預け、これを元手にFRBは債券を買い増していった。100億ドル減らしても依然年9,000億ドルもの債権を購入するのである。債券を購入することで政府に資金供給し、モーゲージ市場を安定させているのだ。

11月の米商業銀行の現金保有額は2.6兆ドルと前年よりも1兆ドル超増大し、過去最高を更新、現金の総資産に占める比率は18.7%に上昇した。預金が前年比6.4%増加している一方、貸出等は2.3%しか伸びていない。預金と貸出の差は拡大するばかりである。

貸出・預金比率と株価には著しい相関関係が認められていたが、2008年以降、貸出・預金比率は下がり続けているが、株価は上昇し続けており、相関関係は崩れてしまった。貸出の前年比伸び率と株価にも明らかな関係が認められていたが、今回は当てはまらない。

米商業銀行の不動産貸付は3.5兆ドルとピークから約3,000億ドルの減少にとどまり、高い水準を維持している。貸付等に占める不動産の比率は11月、47.8%といまだに半分近くが不動産向けだ。住宅価格は上昇しているが、不動産貸付は11月、前年比1.0%減と4ヵ月連続のマイナスである。

このように商業銀行の不動産貸付は幾分減少しているが、政府系企業のモーゲージ貸付は9月末、6.4兆ドル(Financial Accounts of the United States)と依然増加しており、政府が民間の肩代わりし、リスクを取っていることがわかる。モーゲージ総額13.1兆ドルの半分近くが政府系で手当されていることになり、米国の不動産融資は市場メカニズムではなく、中国並みの国家介入で行われているのである。このような国を資本主義国家といえるのだろうか。

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