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FRBは資産購入終了姿勢を貫けるか

19日のFOMC後、バーナンキFRB議長の現在月850億ドル規模の資産購入を来年央で終了させたいとの会見内容は、世界の株式・債券・商品市場を揺さぶった。NYダウは週末比では、5月第1週以来の1万5,000ドル割れとなり、10年債の利回りは2.54%、週間で40ベイシスポイント上昇、2011年8月第1週以来、約2年ぶりの高水準となった。ドルは全面高となり、ドル建ての主要な商品市況は大きく値を下げた。特に、金価格は週間で6.8%、3ヵ月前に比べれば約20%の急落である。

資産購入という金融緩和を止めたいというのだから、米債券利回りが上昇し、ドルが強くなり、商品が売られるのは当然の流れである。ただ、米国の金融政策の変更は、世界の金融・資本市場に打撃を与え、足腰の弱い日本や不況下にあるユーロ経済をさらに下振れさせるだろう。

米ドルへの回帰は新興国の通貨を下落させ、金融市場を不安定にするばかりでなく、債券利回りの上昇により設備投資意欲を低下させ、実体経済にまで悪影響を及ぼすことは間違いない。メキシコやブラジルの過去1ヵ月の利回り上昇は米債の約2倍に達している。欧州ではギリシャ、ポルトガルといった財政危機で売られた国の国債を中心に大幅に上昇、アジアでも軒並み米債を上回る利回りの上昇が起きている。米国発の債券相場の急落がユーロ圏や新興国の為替・債券相場を崩壊させる危険性がある。

FRBの大規模な資産購入が世界中の債券相場の高騰を演出していたが、今度はそれが逆に作用することになり、各国政府の資金調達は苦しくなるだろう。日本をはじめ欧州も財政再建を目指しているが、債券利回りの上昇は、資金調達コストを引き上げ、財政再建をより難しくする。

08年の金融危機が発生してから、FRBは1年4ヵ月でFFレートを5.25%からゼロ(08年12月)へと引き下げた。政策金利の引き下げとともに08年11月には最初の資産購入を実施し、2010年11月には第2弾、さらに2012年9月に第3弾の資産購入を打ち出した。

08年11月時点、米国経済は釣瓶落としの状態にあり、GDPは名目、実質ともに前年比マイナスに落ち込んだ。だが、2009年4-6月期を底に、米国経済は回復しており、第2弾を発表した2010年10-12月期の経済成長率は名目4.3%、実質2.4%と伸びていた。それでも政策金利はゼロに据え置かれ、2012年9月にはさらなる資産購入に踏み切った。

抜本的な処置を施すことなく、単に、FRBは金融政策を無闇矢鱈に進めた。それも、経済はそこそこ成長しているなかでの、ゼロ金利、資産購入であるから、その恩恵を最大限受けるのはマネーの卸売業である金融機関である。金融危機を引き起こしながら、棚から牡丹餅のように利益を得ているのが金融機関なのである。FRBのしていることは経済を良くするという大義名分のもとに、一部の金融機関の懐が潤うようにしているだけなのだ。それについては日銀もまったく同じである。

名目経済成長率が2010年以降、4%程度で推移しながら、FRBは政策金利をゼロに抑えている。債券利回りも4%をはるかに下回ったままである。競争条件下では、4%の経済成長を下回る利回りであれば、まだ十分に収益機会があるので資金需要が高まり、少なくとも4%に到達するまで利回りは上昇するだろう。

2011年9月以降、米債券利回りは2%を下回る異常な低水準で推移してきた。経済成長率に特別変化はないが、債券や株式は買われてきたのである。FRBが債券買いオペを続けるという安心感が債券買いに向かわせたのだ。

政策金利をゼロに据え置いていても、経済が4%も成長していれば、債券利回りがいつまでも4%を相当下回る水準にとどまっていることは不思議な現象である。債券利回りが2%であれば、まだ2%を楽に稼ぐことができる収益機会をみすみす逃していることになる。

これだけ高い収益機会を見送っていることは、米国経済の先行きを不安視しているからだと思う。だから2%前後という歴史的低水準の利回りを受け入れているのだ。あるいは、株式でマネーゲームに興じているのである。

2012年の米名目GDPは前年比4%であったが、今年1-3月期は3.4%と2四半期連続で低下していることから、債券利回りの低下も実体経済を回復させる力がないと判断しているのかもしれない。

バブル崩壊以降、日本が不良資産の中途半端な処理により、いまだに病から抜け出せないのと同じことが米国でも起きているのだ。だからFRBの金融政策が無力なのである。不良資産の問題は当然、経済の足枷になっているし、金融経済に偏った経済、所得格差の拡大、軍事支出依存経済といった米国経済の根底に横たわる難問が米国経済を蝕んでいるのである。

こうした問題を放置したまま金融政策を総動員しても効き目はほとんどない。むしろ、ますます実体経済と金融経済の乖離を大きくし、米国経済の内部矛盾を拡大するだけである。金融経済に過度に依存すれば、2008年のような金融危機に陥るリスクが高くなり、まともな経済とはいえなくなる。

今後、米債券利回りがさらに上昇することになれば、設備投資や住宅着工を冷やし、米国経済は悪化することになる。19日に発表したFRBの経済見通しでは、今年の実質GDPは2.3%~2.6%と3月(2.3%~2.8%)から下方修正した。だが、債券利回りの上昇が進行すれば、このシナリオ通りの成長は難しくなる。しかも世界的な債券利回りの上昇になっているので、米国経済もこの影響を受けることになる。FRBは来年央に資産購入を終了させたいという方針を貫けるだろうか。

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