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FRB副議長、金融政策の変更を匂わす

クラリダFRB副議長の「世界的な減速を示唆する証拠はある」(16日)とFRB当局者からの世界経済に対する懸念発言を受け、円ドル相場は週間で1円の円高ドル安となったほか、対ドルでユーロも上昇した。週末、米10年債利回りは3.06%と11月8日のピークから17ベイシスポイント低下し、10月2日以来1ヵ月半ぶりの水準に低下した。米債利回りの低下によって、主要国の国債利回りも総じて低下した。FRB当局者の景気減速発言は株式にも波及し、米日欧の主要株式は下落、WTIは週間、6.2%も落ち込み、世界経済の減速を織り込みつつある。

日欧に比べて経済成長率が高い米国も物価は引き続き安定している。10月の米消費者物価指数は前年比2.5%と前月よりも0.2ポイント高くなったが、1-6月(2.5%)と同じ伸びである。食品・エネルギーを除いたコア指数は2.1%と7月の2.4%からやや鈍化しており、1-6月と上昇率は同じだ。

1914年から2017年までの104年間の米国のCPI年上昇率を眺めてみると、1951年までの変動は大きかったけれども、それ以降は石油危機を除けば、安定していたといえる。過去20年を振り返っても、最高は2008年の3.8%であり、金融崩壊後の2009年には-0.4%と1955年以来54年ぶりのマイナスになった。2017年は2.1%と2年連続で上昇率は高くなったが、今年も2%台に収まるだろう。食品・エネルギーを除くコア指数の伸び率は1996年以降、22年間も3%未満である。最高は1996年の2.7%、最低は2000年の1.0%であり、過去5年では1.7%から2.2%の狭い範囲に収まっている。物価は雇用のように激しく変動することはなく、よほどのことが起こらない限り、これからも2%前後の安定した物価環境を保てるだろう。

ユーロ圏の物価も安定した状態が続いている。10月のHICPは前年比2.2%と前月よりも0.1ポイント上昇したが、エネルギーを除けば3ヵ月連続の1.3%だ。10月のユーロ圏PMIは53.1と2016年9月以来約2年ぶりの低い水準であり、一段とユーロ圏経済は減速していることが窺える。そうであればユーロ圏の物価の伸びは鈍化していくことになる。

9月のユーロ圏失業率は、8.1%と3ヵ月連続で足踏みしており、しかもギリシャ、スペイン、イタリアは10%を超えている。25歳以下の失業率はユーロ圏で16.8%、スペインやイタリアは30%を超えるという酷い状態だ。これではECBは緩和の金融政策を続けざるを得ないし、イタリアは財政的措置を講じないわけにはいかない。このような高い失業率では過激派が台頭し、民主政治を維持することが難しくなるからだ。

日本の物価はもっとも伸びが低く安定している。これほど低く安定している物価を日銀は2%に引き上げたいという。なんと馬鹿げた話ではないか。この目標に到達できずに、何度も目標を先に延ばしているのだ。だが、いくら先にずらしてもできないものはできないのだ。負け戦とわかっていてもただひたすら壊滅するまで突き進んだ旧日本軍と同じ戦法だ。

闇雲に突き進みたいという考えの持ち主ばかりを政策委員に据え、6年近く同じ政策を遂行している。民間企業が目標未達であるにもかかわらず、6年も同じ経営戦略を続けていくことができるだろうか。そのようなことを許していれば、きっと業績は悪くなり、経営は行き詰まるのではないか。日銀でも同じことが起こるはずだが、政府の後押しがあり、そうなってはいない。でも実際は小心であり、内心はびくびくしているように思う。

日本で物価が上昇しないのは所得が伸びず、需要が減少しているからだ。2017年の勤労者世帯収入(二人以上の世帯、男の世帯主収入)を2000年と比較すると、10.2%減少している。世帯主の配偶者の収入が同期間19.4%増加したことなどから実収入は5.1%減にとどまった。収入の減少に伴い消費支出は8.4%減である。全体が減少するなかで通信費は59.6%も伸び、消費支出占める割合は2000年の3.1%から2017年には5.4%に上昇している。直接税や社会保険料の非消費支出は12.5%増加し、非消費支出・実収入比率は18.6%と2000年から3.1ポイントの上昇だ。実収入から消費支出と非消費支出を差し引いた黒字は8.4%減少している。

消費支出の減少が物価上昇を抑えている。生鮮食品・エネルギーを除く物価指数は消費税率引き上げ後の期間を除けば、長期間ゼロ前後で推移している。2014年4月に消費税率を引き上げたことから2014年は2.2%に上昇したが、3年連続で伸びは低下し、2017年は0.1%だった。日銀が目指す物価上昇率2%はバブル経済に移行しつつあった1985年(2.4%)まで遡らなければならない。

人口減、少子高齢化、収入減という状況下では消費は減少するのが自然である。同時に、物価は需要不足によって低下していくことになろう。車などにも端的にあらわれており、昨年の新車販売台数は523.4万台とピークの1990年(777.7万台)比254.3万台も減少している。スマホの普及に伴い、情報通信関係費は2万円を超え、自動車関係費に近づきつつある。車だけでなく全般的にモノは売れなくなっているのだ。モノが売れないのは、情報通信関係費が嵩むことに加えて、デジタル画像で満足する、満足させているからなのだろうか。

日米欧、いずれの地域の物価も商品相場の下落によって、これから上昇率は鈍化するだろう。日本や欧州の金融政策の変更の余地はないけれども、米国は利上げが見込まれていただけに、物価上昇圧力の低下や経済の減速等の金融政策への影響は大きくなるだろう。今回、利上げの打ち止めがほのめかされたように、FRBは金融政策変更の下地作りに本格的に取り組んでいくのだろうか。そうであれば、米債はさらに買われ、ドルは弱含むことになるだろう。

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