米国社会を分断した原因として経済格差を挙げることができる。所得格差、資産格差が大きくなればなるほど不満、妬み、怒り、恨みなどの気持ちが昂る。こうした感情がさらに激化すれば「過激、無法、暴力」となって社会を分断することになる。歴史を振り返ってみても、貧困層の拡大は、社会の安定を損なう要因であったことは否定できない。
『World Inequality Database』によれば、2019年の米国の所得・資産格差は1930年代、1940年代に遡らなければ見られない歴史的な出来事なのである。所得上位1%が総所得の18.7%を所有しており、1976年の10.2%から8.5ポイントも上昇、1943年以来の所得格差なのである。一方、下位50%は総所得の13.5%しか所有できず、トップ1%を5.2ポイント下回っている。1969年には21.4%を所有していたが、低下し続け、大恐慌後の1934年以来の酷い格差下にある。
資産についても、上位1%の所有率は1978年の21.5%を底に上昇し続け、2015年には36.0%、2019年は幾分低下し、34.9%だが、1941年以来78年ぶりである。いずれにしても米国の所得・資産格差は1980年前後を境に著しく拡大し、第2次大戦以前の大格差社会に戻ってきているのである。